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YT「なあA、ジョンウどこに行ったか知らないか？」
「え？ジョンウ？…知らないよ、どうして？」
テヨンと別れ、寮に戻ったとき。
エントランスで鉢合わせたユウタの表情は、どこか疲れているように見えた。
静かな夜の始まり。
彼の長い黒髪と、その向こうから覗く瞳は、獲物を求める狼のようだ。
私が彼に出会った頃感じていた、得体の知れない恐怖心。
私の本能は間違っていなかった。
YT「あいつ、昨日の晩から行方不明なんだよ」
「行方不明…？」
YT「外出願出してないし、これでもし脱走なら停学、謹慎、懲罰房行きは確定だな。何か事件に巻き込まれていないといいけど」
ユウタは心配そうな表情を浮かべ、白い月を見上げる。
その美しく整った横顔を見つめて、胸を躍らせることももう無いだろう。
…優しくて、寂しさを埋めてくれた。
今思えば彼に身体を許したのも、一種の自傷行為だった。
もう貴方には騙されない。
「…なんて言って、ほんとは貴方が殺したとか、そんなんじゃないの」
YT「…え？」
ユウタをきっと睨み上げる。
彼は驚いた表情で私を見ていた。
こんなこと言って、本当に私の身が安全なのか分からない。また彼が持つ不思議な力にかけられて、おかしなことになってしまうかもしれない。
だけど、それでも、抵抗したい。せめて彼が私の意識をおかしくするまで、“本当の私”は彼に抗っていたい。
「ジョンウがどこ行ったかなんて知ったことじゃないけど、でも、私の大切な友だちにこれ以上手を出したら、許さない。…てか、あたしに迷惑かけてる時点で、もう絶対あんたのこと許さないから」
YTちょっ…待って、何？なんのこと？」
「うるさい！」
YT「落ち着けって！」
ユウタが私の腕を掴む。
反射的に逃げようとすれば、彼は私の頭に手を当てて彼に引き寄せた。
ユウタの瞳がすぐそばにある。
…紅く、光る。
“君は俺が護る”
“君に鬼のまやかしが効かないようにしよう”
私は、ユウタの頬を叩いた。
YT「っ……！」
「あたしに触んないで！」
ユウタの腕をふり解く。
全身の力を使って彼を押せば、ユウタは後方によろけて尻餅をついた。
胸が激しく上下する。息切れが止まらない。
だけど、彼から逃げなければならない。
私は玄関から駆け出した。
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れいら(プロフ) - 閲覧頂きありがとうございます、本編では文字数オーバーなのでこちらから失礼します。公開が大変遅れてしまいましたが5章目が完成しました。次章で最終章になります。公開まで今しばらくお待ちください。 (2023年3月2日 11時) (
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作者名：れいら
| 作成日時：2023年3月2日 11時
