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「…話せないって、言ってたくせに」
TY「あはは… …君とは話しちゃいけないって、俺自身が強くそう思っていたからね」
「話しちゃいけないって…。……もう、あなたは何者なの…」
TY「…」
私の口から思わず漏れた言葉。
…もう分かっていた。テヨンが只者ではないことくらい。
それどころか、きっと私がこの森にやって来た理由も、一部はテヨンが握っているんじゃないかって。私を取り巻く摩訶不思議な現象を明かす鍵を、テヨンが持っているんじゃないかって。もうずっと、そんな気がしていたけれど、テヨンに直接問う機会も無いままに季節は過ぎていった。
私はテヨンを見つめる。
吸い込まれそうなくらいに魅力的なその瞳。
宝石のように美しい。そしてどこか、哀しい。
なぜか頭が痛む。そして気が遠くなる。
何か、とても大切な風景が霞んでは、一瞬で消えていく。その繰り返しで、私の記憶は曖昧に歪んでいく。
だから私は知りたかった。
どうして私が、私も知らないうちに、貴方のことを知っていたのか。
貴方の温もりを、憶えていたのか。
「テヨン、教えて…」
TY「…」
「あなたは何者なの？……私の花嫁の血って、なに…？」
テヨンは表情を変えない。
人間離れした美しい造形が、静かに私を見つめているだけ。
その視線は私の心までもを透明にして、私の本能を蘇らせる。
テヨンはふっと視線を逸らす。
それを追うように彼が見つめる先へ私も目を向ければ、私の視界には暖炉の上に飾られた写真立てが映った。
…それにしても、年季の入った彼の部屋のインテリアは、学園の装飾と同じくバロック調で、この国の文化とはかけ離れた西洋の香りを感じさせる。
家具の美しさに思わず気をとられていた私は、不意に視界の中で焦点の合った“それ”に目を見張った。
思わず立ち上がり、それに近寄る。
手に取って、薄い硝子の向こうを覗いてみれば
私の中で静かに心拍数が上がっていくのが分かった。
…目頭が熱くなる。
何かが、私の中を駆け巡っていく。
柳を揺らす、風の香り。
人混みを舞う、真っ白な雪。
私の手を引く、その手の温もり。
「わたし…？」
暖炉の上に、手入れをされて飾られていた写真立て。
その中に入っていたのは、古い肖像画。
そこには、
肩を寄せて微笑み合う
私とテヨンの姿が描かれていた。
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れいら(プロフ) - 閲覧頂きありがとうございます、本編では文字数オーバーなのでこちらから失礼します。公開が大変遅れてしまいましたが5章目が完成しました。次章で最終章になります。公開まで今しばらくお待ちください。 (2023年3月2日 11時) (
レス) id: 0149abc0ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れいら
| 作成日時：2023年3月2日 11時
