惨劇の幕開け ページ20
.
TY side
TI「前に話したら気になっていた様子だから、調べておいたよ。王様」
TY「え？」
TI「鬼について」
TY「…！」
Aと別れたあと、薄暗いままの自室に戻れば、待ち受けていたようにソファーで本を広げていたテイリヒョン。彼は今日も浮遊感のある笑みを浮かべている。
Aにはやはり鬼の手が迫っていた、そればかりか、既に被害が及んでいるようだった。自我を失い、体内に巣食う何者かに意識を支配され、自分が何をしているのか分からなくなる。人間の脳への干渉は、まさに鬼のような存在だけが為せる技だろう。
…テイリヒョンは今日も、俺たちのやり取りを見ていたのだろうか。
どこにだって意識を飛ばせる彼のすることは計り知れない。
彼がもし俺と敵対する立場にいたら、と考えるだけでぞっとする。
俺はテイリヒョンの正面のソファーに腰を下ろし、テーブルの燭台に蠟燭を立てて火を灯した。辺りがぼうっと明るくなり、ヒョンの表情がよく見えるようになった。
TY「…鬼ってなんなの、ヒョン。俺に殺せる存在？」
TI「ふふっ、テヨンに殺せないものなんてないでしょ」
TY「それなら…そいつは誰だ？」
TI「覚えていないの？過去に一度逢っている」
TY「…」
ヒョンは微笑む。
そして、手元にあった古い巻物のようなものを、朗々と読み上げる。
TI「“かの時代、怨念に駆られ蘇りし男が在った。男は不死身なり。男は強い妖術持ちて人里より遠ざけられし。尚も人間襲いて夜には身を潜め、人ならざる鬼が人のふりして世を渡りし”」
TI「どうやらうんと昔のことみたいだね。何かの戦乱だかで命を落とした男が、己の強い怨念で蘇ったと。…まるでテヨンみたいじゃない？つまりは彼も鬼の力を宿した、人ならざる者であって…」
TI「彼を突き動かすのは、己の強欲…」
戦乱で命を落とした男。
過去に一度、会っている。
そんな男が、俺の身近に居るか？
吸血鬼のふりをして、Aを狙っているのか？
胸に突き刺された刀。
振り乱された髪、赤黒い血の泉。
俺を見上げ、懇願した瞳。
…そうか。
あまりに容貌が変わり果て、人格までも偽るのが上手すぎて、気付きもしなかった。
自らの欲のため、人を駒のように扱うか。
そんな男に、成り下がっていたのか。
TI「それで、あいつのこと、どうするつもり？」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1386人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れいら(プロフ) - 閲覧頂きありがとうございます、本編では文字数オーバーなのでこちらから失礼します。公開が大変遅れてしまいましたが5章目が完成しました。次章で最終章になります。公開まで今しばらくお待ちください。 (2023年3月2日 11時) (
レス) id: 0149abc0ab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：れいら
| 作成日時：2023年3月2日 11時
