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TY「…覚えてる？雨の中で倒れていたこと…」
「……うん、…」
TY「そっか…。…ここ、俺の部屋だよ。寒くない？」
彼は私の頭を撫で続ける。
今はもう真っ暗になった窓の向こうへ視線を逸らし、もう一度私のことを見下ろした。
テヨンの問いに私は頷く。
すると、彼は心底ほっとしたように、微笑みを返してくれた。
私は…
…そうだ。
ヘチャンと口論になった。
あのまま、ヘチャンは私のもとを去っていった。
振り向くことも無く、それどころか最初から私をいなかったもののように扱うみたく、ただ無機質な背中だけを見せた。
私は呆然としながら、それを見つめ続けていた。
あの瞬間を思うと、胸がずきんと痛む。
曲がりなりにも、私が好きなひとが私に向けた、あんな眼差し。それは強烈なトラウマとなり私の心に焼き付いたようだった。
…それでも私は、ヘチャンを責める気にはならなかった。
私の表情の変化を敏感に察知したのか、テヨンは私の手を優しく握った。思わず彼のことを見上げれば、私を慰めるような眼差しで、心ごと包み込んでくれるように私を見つめている。
…どうしてこんなに、優しいの。
ずっと私の前から姿を消していたくせに。
もう二度と逢えないと、思っていたのに。
私はあなたの存在を求めて、薔薇園へと何度も惹き寄せられていたのに。
そして私は、ある瞬間にはっとする。
思わずテヨンの手を強く握って、起き上がった。
「……喋った…？」
TY「…ふふっ、そうだね。喋っちゃった」
「ちょっ…ちょっと待って、ええっと…」
そうだ。
テヨンが話した。
…テヨンが、話した。
私は彼と一度も声での会話を交わしたことが無かったのに、何故か私は彼の声を知っているような気がして、なんの違和感も覚えずにさっきまで話していたけれど。今までずっと筆談でコミュニケーションを交わしてきたのは、彼が“俺は言葉を話せないから”と言ったからで。
それなのに、私が驚愕する様子をお茶目な笑顔で見守っている彼は、その白い歯を覗かせている。
棘を持つ薔薇のように近寄り難いその見た目より、ずっと優しい声色。
その声も、話しぶりも、やっぱり私は初めて聞いた気がしなかった。
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れいら(プロフ) - 閲覧頂きありがとうございます、本編では文字数オーバーなのでこちらから失礼します。公開が大変遅れてしまいましたが5章目が完成しました。次章で最終章になります。公開まで今しばらくお待ちください。 (2023年3月2日 11時) (
レス) id: 0149abc0ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れいら
| 作成日時：2023年3月2日 11時
