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「…あの」
意を決し、声をかける。
彼はすぐに私へと振り向いた。
まるでずっと私がここに居たと気付いていたように。それを、待ち構えていたように。
…とても大きな瞳。
通った鼻筋、細い輪郭
すらりとした体躯
瞼にかかる、黒い髪。
正面から彼の顔を、こんなにもまじまじと眺めたのは初めてだった。
私はその美貌に、言葉を失う。
まるで人間じゃないみたいだ。
こんなに綺麗な人を、私は見たことが無い。
薔薇の庭園、というシチュエーションも相まってか、私は絵画の世界に迷い込んでしまったようだった。
「…そうだ、あの…」
忘れてはいけない。
私は手に持っていたジャムクッキーを差し出した。
彼は不思議そうに私の指先を見つめる。
どうしてか、ほんの少し、苦しそうな表情を湛えながら。
「あの、この前、本当にありがとうございました。おかげでチソ…あの男の子も、大事には至らなかったです。」
無言。
「あの…紅茶とか、飲みますか？その…お茶に合いそうなクッキー、見つけたので。お礼と言ってはなんですけど…」
無言。
「…よければ、どうぞ…」
…無言。
彼は一言も話さなかった。
私もようやく思い出した。
私は未だに彼の声を聞いたことが無い。
2人の間に流れる沈黙は、一瞬のようにも、永遠のようにも、感じられた。
私はただ、彼のことを見上げていた。
彼はちらりと、控えめに私を一瞥する。
そして、小さく礼をしながら、クッキーを受け取った。
ふと、彼の口の形が動いていることに気付く。
何かを言いたげな、だけど、息すら漏れることなくぱくぱくと動く、その唇。その仕草はどうも特徴的で、彼が何かを訴えたがっているのは明白で、そして私はやがて気付いた。
…話せない人、なのかもしれない。
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ゆら(プロフ) - れいらさん» 本当に楽しみにしていました！何回も読ませていただきます🥺 (2022年7月6日 20時) (
レス) id: b4dc2fdbd2 (このIDを非表示/違反報告)
れいら(プロフ) - ゆらさん» お返事遅くなってしまいました。とても嬉しいお言葉ありがとうございます🥹次章を公開しましたので、是非お読みいただけると嬉しいです🤲🏻 (2022年7月5日 16時) (レス) id: 0149abc0ab (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - 本当に好きな作品に初めて出会いました。楽しみにしてます🥺 (2022年6月15日 18時) (レス) id: b4dc2fdbd2 (このIDを非表示/違反報告)
れいら(プロフ) - ミアさん» ありがとうございます！😭💖また1章分書き上げてからの公開になるので少し時間が空くと思いますが、ぜひ続きをお楽しみにお待ち頂けたらと思います😌💕 (2022年6月13日 22時) (レス) id: 0149abc0ab (このIDを非表示/違反報告)
れいら(プロフ) - ハルさん» ありがとうございます🥹とっても嬉しいです！ご期待に添えるよう素敵なお話を目指してこれからも書いていきたいと思います✊🏻コメントありがとうございました！！❤️ (2022年6月13日 22時) (レス) id: 0149abc0ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れいら
| 作成日時：2022年6月13日 14時
