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TY side
TY「…A、大丈夫？」
「…テヨンア、速く、走りすぎ…、はぁ…、」
TY「ふふっ、ごめん。ついてきてくれて、ありがとう」
まだ呼吸が整わない様子のA。
昔飼っていた犬を撫でるときが、俺は一番優しい手つきをしていたっけ。
人の頭なんて撫でたことがA以外無いからやっぱりぎこちなくなるけど、
精一杯この暖かな気持ちが伝わるように髪を撫でれば、
Aはやがて、いつもの可愛らしい笑顔で微笑んだ。
「…テヨンイは怪我、無い？大丈夫…？」
TY「かすり傷だけだよ」
「…そっか。……ありがとう、助けてくれて…」
TY「…」
Aの声が震える。
彼女は俺を見つめていたけれど、やがて赤らんだ目を押さえた。
…怖かったに、決まってる。
あんな現場で、同僚に突き飛ばされて、殺されかけて。
酷い孤独を感じただろう。…どうしてもっと早く、そばに居てあげられなかったんだろうか。
朱雀会の香港支部、その一端と思しき奴らが突入してきた時、俺は咄嗟に女性たちを庇いながら反撃の機会を窺い、身を隠した。
だけど遠くの席で、人がばたばたと倒れていく。
気付けば、Aの姿を必死に探していた。
そして、Aが銃口を向けられている光景を見た瞬間
俺の中に獰猛な血が巡り、力いっぱいに駆け出していたんだ。
これまでどんな時も、俺の顔を見たやつは味方以外ほとんど殺してきた。
…だけど今日、最後の二人の男だけは、仕留められたか分からない。
Aの穏やかな微笑みを見つめるとこの胸に湧き起こる感情の名前。俺はまだそれを知らないけれど、無意識に口元が緩むような気がするんだ。
だけどこの先のことを思うと、あっという間に憂いが胸を満たす。
名残惜しい。
離れたくない。
…それでも、全てAのためだ。
大切な、彼女のためだ。
TY「…A」
「…うん？」
TY「俺、しばらくこの街を離れるよ」
「…」
さっと、彼女の表情から笑みが消える。
口角が一文字になり、俺を見つめる瞳は悲しみを帯びる。
…心苦しい。
彼女のそんな顔を見たくなかった。
だけど、
…本当は
こんな、こんな汚れて、生きる価値なんかとっくに失ったような俺に、
そんな顔をしてくれる。
それが嬉しいようで、悲しいようで、照れ臭いようで、
胸が締め付けられるように苦しくなる。
この感情を、なんて言うのか。
俺にはまだ、分からなかった。
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れいら(プロフ) - さとみさん» 大変お待たせ致しました。次章をアップ致しましたので、ぜひお読み頂ければ幸いです！ (2021年10月14日 18時) (
レス) id: c38a85a6a7 (このIDを非表示/違反報告)
さとみ(プロフ) - 続き楽しみです！ (2021年10月6日 2時) (レス) @page50 id: 3be0ba2d24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れいら
| 作成日時：2021年9月21日 19時
