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私の背中を抱き寄せた、骨張った手。
筋肉はあるのに、華奢な体。
哀しい、血の香り。
テーブルの下に身を隠し、向こうの不意の隙をついて
腕だけ上げて 相手のことを見もしないで
彼の胸の中で泣きじゃくる私を、しっかりと抱きしめながら伝わる振動。
また一人、一人と 人が倒れていく鈍い音が、遠くから聞こえてくる。
やがて、銃声が収まった。
あれだけ上がっていた怒号が嘘のように、現場は静まり返っている。
むせるような鉄の匂いに、女性たちの小さな悲鳴に、
…すぐそばで血の海が広がっていることが分かった。
私が震えながら顔を上げれば、
その黒目がちな大きな瞳で
心配そうに、私を見つめている。
テヨンの姿に、また涙がこぼれ落ちた。
「っ……、…テヨンア……」
TY「…A、怪我は無かった…？」
「…うっ、ひっ……く、……」
TY「…」
テーブルの下で密着する体。
テヨンの胸が触れると、その鼓動は驚くほどに静かだった。
恐怖の糸がぷつりと切れて、堰を切ったように涙が止まらない。
声をあげて泣きじゃくる私を、テヨンは何も言わずに、強く抱きしめた。
彼の胸の中は、とっても暖かかった。
彼の命の温もりは、やさしかった。
ふと、気付く。
リボルバーを握る彼の手には、返り血だろうか、それともガラスで切った怪我なのだろうか
鮮血がべっとりとこびり付いていた。
思わずその手を両手で握りしめれば、
テヨンは困った顔をして、…優しく微笑んだ。
TY「…あれはこの組と軋轢がある、香港の奴らだよ。クラブで急襲なんて、一般人を巻き込むなんて…ふざけてる」
「……もう、終わった…の…？」
TY「…Aを撃とうとしたやつは、撃った。周りにいた仲間たちも、撃った。ただ…このクラブを出なきゃいけない。俺は人を撃った。あいつらが次に何をしてくるかも分からない。警察が来る前に、あいつらから逃げなきゃ」
「…」
TY「…A、走れる？足に怪我は無い？」
「……大丈夫…だと、思う…」
TY「そっか。なら上出来だ」
そう言うなり、
テヨンは微笑んで、乾いた手でぎこちなく私の頭を撫でた。
胸がまた音を立てる。
…せっかく止まった涙が、またじんわりと湧いてくるみたいだ。
テヨンは私の後頭部をぐっと引き寄せると、小さな声で囁く。
私は無意識のうちに、彼の背中へ腕を回していた。
テヨンはもっと強く、私を抱きしめた。
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れいら(プロフ) - さとみさん» 大変お待たせ致しました。次章をアップ致しましたので、ぜひお読み頂ければ幸いです！ (2021年10月14日 18時) (
レス) id: c38a85a6a7 (このIDを非表示/違反報告)
さとみ(プロフ) - 続き楽しみです！ (2021年10月6日 2時) (レス) @page50 id: 3be0ba2d24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れいら
| 作成日時：2021年9月21日 19時
