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TN side
…そんなこと、分かってる。
わざわざ惨めな思いをさせるなんて、嫌がらせかよ。
ボクの中でふつふつと湧き上がる感情。
怒りなのか、悲しみなのか。
浮き足立つ街の雰囲気とはまるで正反対な空気感が、ボクたちの間に流れる。
「…すごく大切な人がいるの。さっき、その人に関することで…少し気になることっていうか…心配になること、聞いたから。ずっとそのことを考えてた」
TN「…それは、Aの好きなヒト？」
ボクの問いかけに、Aは一瞬戸惑ったような表情をして
…そんな顔、ボクには見せたことないじゃないか。
とびきり美しい彼女の全てを掌握した気でいたのに、さっきから次々と現れる、ボクの知らないA。
勝手な敗北感と惨めさに苛まれていたら、
Aは蝶の羽が揺れるように、そっと頷いた。
「…そう。好きな人。…ずっとずっと、好きな人…」
…ああ、また。
ボクは、どんどんキミに失望していく。
あんなにも、夢中にさせたのに。
どうしてキミは、ボクのモノになってくれないの。
TN「…Aの中で、ボクはイチバンじゃないんだ。それなのにどうしていつもこんな風に、ボクのこと買って、ボクに完全に惚れてる目で見上げて、なんでもしてくれるの」
「…」
TN「ボクのことを好きなのに、…なんでボクより大切なヤツがいるの？」
「…テンの中でも、私は一番じゃないでしょ」
TN「…」
「愛情って、一方通行で成立するものじゃないんだよ。あなたが私を愛そうとしないなら、私もあなたを愛しようが無い」
その言葉にはっとする。
Aの声は極めて落ち着いていて、凪いでいた。
…そんなこと、言われたって。
分かるわけないだろ。
誰かを愛したことなんて無い。
愛ってなんだよ。訳が分からない。
ボクがAを求めてるのか。
まさか、ボクはAに“愛されたい”と望んでいるのか。
そんなこと認めたくなかった。
ボクは唇を噛み、押し黙ってしまった。
ボクに盲目なはずのAが、今は別人のように見える。
ボクを見上げてるのに、ボクを見ていない。
その間に、ほら
ボクじゃない誰かを見つめてるんだ。
「…テヨンア…？」
知らない人の名前を呼ぶ。
ボクの右側を、駆けていく。
この豪華に美しく飾り立てた心の中に、風が吹き抜ける。
…見た目だけで中には何も入っていないから、
妙に風通しが良くて悲しくなる。
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れいら(プロフ) - さとみさん» 大変お待たせ致しました。次章をアップ致しましたので、ぜひお読み頂ければ幸いです！ (2021年10月14日 18時) (
レス) id: c38a85a6a7 (このIDを非表示/違反報告)
さとみ(プロフ) - 続き楽しみです！ (2021年10月6日 2時) (レス) @page50 id: 3be0ba2d24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れいら
| 作成日時：2021年9月21日 19時
