Crossed Destiny (ページ8)

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◇同じ瞳ページ8

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「…はぁ」

なんだか、どっと疲れた。
悪酔いしてるのだろう。体力的にも、精神的にも疲弊している。

ふと立ち止まってみれば、喧騒の中でただ一人、私は何をしているのかと冷静になる。鈍く痛む頭を押さえながら、薄暗い路地に入って息をついた。

…ここ、何処なんだろう。私、何をしてるんだろう。
胸元を渦巻くどす黒い感情。ネックレスのチャームが手のひらに食い込むまで強く握る。

どうしてだろう。
ジェヒョンさんと居ると、嫌なことを沢山思い出してしまった。
あの頃の景色が心に浮かんだの。

…そんなわけが無いのに、どこか懐かしかった。彼の話しぶりも、眼差しも、声色の穏やかさも。
自分が感じたことがおかしいと分かっていても、確信めいている気がして。それが余計私の気分を悪くさせた。

“Aはいい子だもんね”

“おまえ、母さんいないの？”

“生まれてこなきゃ良かったのに”

“…なんで、ひとりなの？”

…ほんの少しでも、本当に、本当に、認められたかもしれないって。

彼に必要とされてたかもしれないって。

あの優しい笑顔に、縋りたくなった。

だけど彼が欲しいのは、お金だけだ。

私ではない。

「……疲れた…」

…こんなとこでうだうだしてたって、なんにもならないじゃない。普段歩かない街で、慣れない空気を吸っているから、こんなにも気持ち悪くなるんだ。

自分の頬を軽く叩き、目を開ける。
地面にぞんざいに置いていた鞄を持って、さあ帰ろうと姿勢を正す。

どうせ、もう二度と会わないだろう。いつかは忘れるだろう。
だから、早くもとの生活に戻った方が自分のためだ。
こんな夜など、早く明けてしまえ。

そんな時だった。

『うっ……は、…』

…私の背後で、誰かが呻く声。

背筋が凍る。本能的に危険を察知して、振り向いてはいけないと、身体が硬直する。

物騒なこの街だ。路地裏なんて何が起こるか分からない。
危険な人物がすぐそばに居たら、何をされるかたまったもんじゃない。

私は足早にその場を去ろうとした。
本当に、そうしようとしたんだ。

なのに、

それなのに。

どうして、振り向いてしまったのだろうか。

彼と、目が合った。

彼は、寂しげな目をしていた。

運命はこうして、音も無くすぐそばへとやって来る。

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