Crossed Destiny (ページ5)

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◇穢れた街でページ5

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「ほ…ホストぉ？」

『そうそう、最近流行ってるのよ。Aも行ってみない？』

「ホストってあの、タナカみたいな人たち…だよね？」

『あははっ、ちょっと違うけどね。みんなでお酒飲んで盛り上がれるよ。いや～、実は私の担当に友達連れてきてよってお願いされちゃったんだ』

「た、たんと…何それ？」

『なんでもいいでしょ！私のためだと思って、お願い！』

大学に入って初めての期末試験を来週に控えながら、私の数少ない女友達がそんなことを言ってきた。私は予想外の角度からの話に、口をあんぐり開ける。

ぺらぺらと知らない世界のことを話されてその空気感に圧倒される。が、そもそも夜の街とか、遊びとか、あまり興味の無い私からしたらこれっぽっちも惹かれない。

けど、彼女は新規顧客がとか、ノルマがとか、担当のためにとか。とにかく必死な様子で、最終的には飲み代は私が持つとか言い始めた。

…本当に来て欲しいんだな。
これで変なことに巻き込まれないといいのだけれど。

それに、“やなやつ”って思われたくないし。

「…しょうがないなぁ」

『ほんと！？マジでありがと～！！』

「今回だけだよ？」

そんな経緯で、私は人生でほぼ初めて繁華街に足を踏み入れることになった。ホストの仕組みとか、どんな遊び方をしたらいいとか、友達は沢山教えてくれたけど、私はいざ実際に目にした街の異様な空気に気を取られてばかりだった。

淀んだ雰囲気、ネオンが照らす曇天。
どこからともなく飲食店の排気口から繰り出される匂いと、放置されたゴミ、煙草の煙が混じり合っている。

派手なファッションの若者が歩く道端で、物乞いが段ボールの上で横になっていたり。路地の隙間を見てみたら、何やら外国人が束になって取引をしていたり。また何処かからは、怒声や硝子の割れる音が聞こえてくる。

じろじろと私たちを見つめて来る行きずりの男。
視線に表れる卑しい感情、その矛先にされることが不快でたまらない。

私は思わず友達と身を寄せ、声を潜めた。

「なんか怖い…」

『大丈夫、ホストは怖くないしあとちょっとだから！ほら着いた！』

友達はきらきらした目で看板を見上げている。
…そんなにいい所なの？騙されてるだけじゃない、なんて思うけどそんな本音は押し込んで。

カジュアルなファッションに身を包んだ男性が元気に迎えてくれるけれど、私は魔境に足を踏み入れる気分だった。

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