・ ページ40
.
「…どうして、逃げてくれなんて言ったの」
MK「…」
「私を捕らえることが、あなたたちの目的なんでしょ？あのまま私を攫うことなんて、いくらでも出来たはずじゃない…」
MK「…」
「…ねえ、なんとか言ってよ。どうして…どうして、」
MK「…A」
「……そんなに、優しいのよ…」
両手で顔を覆う。
窓を打つ雨の音が、静かに聞こえてきた。
込み上げる嗚咽を堪えながらも、感情は体から溢れ出して留まるところを知らない。それもこれも全部、マークのせいだ。…マークのそばに居ると、私はどうしてか、おかしくなってしまうんだ。
どんな弱さも、醜さも、受け入れてくれる。
彼の丸い瞳に映る私が、どんな姿であっても。
マークは、窓の外を見つめていた。
寂しげな、悲しげな、その横顔。
陰りを見せる表情が、私の心とおなじ形をしていた。
MK「…最初は」
MK「目的のためならどんな手を使ってでも達成するし、それが誰かを傷付けることになっても構わないって。本当にそう、思っていた…」
MK「…Aじゃなければ、どれほど良かっただろうって」
MK「何度も、そう思ったよ」
優柔不断になってしまう俺が、俺は嫌いだ
そう、マークは小さな声で呟いた。
三角座りをする自分の足に顔を伏せる彼の姿は、酷く弱々しく見える。
私はずっと、彼のこんな姿ばかりを見てきた気がする。
…だけど、そんな彼が好きだった。
胸の奥が、苦しくなる。息が詰まって、眩暈がする。
このまま消えてしまいたいって、彼と二人で消えてしまいたいって、そう思った。何度も、何度も。
MK「俺たちのことに…君を巻き込みたくない。だけど君の存在が必要なのも、事実で…」
「…」
MK「どうすればいいのか…俺にも分からないんだ」
「マーク…」
MK「…Aを、普通の女の子のまま過ごさせたい。ずっとそう思ってる、本気だよ。危険に晒したくなんかない、だけど……って、」
「…」
MK「…結局、なんの分別もつかない。そんな俺が嫌になる…」
マークは、言葉尻を震えさせながらそう言った。
自己嫌悪に満ち溢れた表情が、霞んでいく。
あの純真な笑顔とは、程遠い。
彼はきっと、裏社会に身を置くにはあまりにも純粋で、壊れやすい。
マークはじっと、自分の右腕を見つめていた。
MK「…だけど」
「え…？」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 829人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
cooky(プロフ) - 設定がすごく良く作り込まれている作品だと思います！続きも楽しみです！！:) (3月19日 1時) (
レス) @page49 id: 8d4c7960bd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：れいら
| 作成日時：2024年3月18日 2時
