Crossed Destiny (ページ39)

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◇雨の晩にページ39

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MK「…今日は大変な一日だったね」

「…」

MK「…A？」

真っ暗な部屋の中。普段は落ち着く自室でも、気分は憂鬱なままだ。
体が鉛のように重い。ベッドに腰を下ろすと、もう立ち上がれない気がした。

私を心配して家にまでついてきてくれたマークは、困った顔をして頭を掻いている。彼に声をかけなきゃいけないのに、そんな気力すらも湧かない。頭の中が空っぽで、だけどまだ少し、混乱していた。

…私の親が、黄龍会の人間で。
顔も知らない父親は、政治家で。
私の首に掛けられた鎖には、1000億の価値がある。

社会から抹消されて生きてきたというのに、まだ足りないのか。…私が死ななければ、彼らの争いは終わらないのか。

“あなたを守ることを約束する”

そう私に誓ったあの女性の鋭い瞳は、何もかもを失う覚悟を持った人の眼差しだった。

…私を守るとか、1000億とか、組織の復讐とか。
どんな話をされても、何も実感出来ない。
私の生い立ちなんて、あたかも真実のように話されたけれど、真偽の確かめようが無いじゃない。

どうして、私なのか。

私はただ平穏に、暮らしていられればそれで良かった。

「…そのへん、適当に座っていいよ」

MK「…うん」

私の言葉に少し黙ったあと、申し訳なさそうに彼は座椅子に腰を落とした。

…そういえば、怪我、治ったのかな。
彼の腕を見ると、もうそこに包帯は無かった。

あの晩、彼と初めて出会った。

だけどそのとき、彼は確かに言っていた。

“俺たちから、逃げてくれ”

…と。

薄明りだけが射し込む、闇の中。
こちらを心配そうに見つめている彼の瞳は、やっぱり澄んでいた。

あんな世界に身を置いて、復讐のために全てを犠牲にして。

それでも尚、どうしてあなたはそんな表情を出来るのか。

…そんな目をするから、あなたは残酷だ。

「…マークは、最初から知ってたんだね。私のこと…」

MK「…」

「あの夜に私と出会ったのも、偶然？…それならどうして、俺たちから逃げて、なんて言ったの」

MK「…それは、」

「…あの女の人の差し金だったんでしょ」

MK「……、」

「私の身柄を確保しておきたいから。私のネックレスが目的だから…」

彼は私の言葉を、なにひとつ否定しようとしない。

…その真っ直ぐさに、惹かれたんだ。

私の瞳から、ぽろぽろと抑えきれずに涙が出た。

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