Crossed Destiny (ページ38)

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俺はホットコーヒーにエスプレッソのショットをガンガン追加しつつ、ヌナの様子を静かに窺っていた。

彼女は忙しなくデータの整理や各所とのやりとりをPCで行ってる。時に顔を顰めながらも俺の話に付き合ってくれる優しさが、俺は好きだった。

その後も他愛も無い世間話をしたり、ラーメン作ってくれなんて自分でもだるいなと思う絡み方をAヌナにしつつ、限られた休息の時間を過ごす。脚を放ってソファーに座ると、途端に眠気が襲ってきた。

…一つだけ、浮かぶ疑問がある。

Aをこうまでして黄龍会との抗争に巻き込む必要があったのか、ということだ。

あのネックレスなんてテヨンイヒョンの日本刀で簡単に壊せるはずだし、そうして鍵を奪ってしまえば黄龍会の意識はAではなく俺たちに向く。副大統領の隠し子であるという懸念点も、今まで通り俺たちが警護していればなんの問題も無かった。

しかしAヌナは、Aを派手に巻き込んだ。
現に彼女は黄龍会から明白に狙われるようになったし、これからも危険な状況が続く。

…Aヌナには、俺たちと違う目的がある。

彼女を野放しにしておくことは危険だと、仲間たちは少しずつ気付いているだろう。

微睡みの中でそんなことを思っていたが、一瞬にしてその安らぎは切り裂かれた。

『こちら“23”！応答せよ！！』

『…！』

その張り詰めた声。
俺は一瞬で飛び上がり、そんな俺の異変にAヌナも目の色を変えてこちらの様子を窺っている。

『こちら“13”』

『保護対象の自宅周辺に虎華の構成員が複数名…』

『なに！？』

俺は仲間からの連絡を受けつつ、Aヌナの様子を横目で見る。

彼女は何を聞かずとも、既に武器の装備を始めていた。

連絡を終え、俺は彼女に向き直る。

『Aの自宅周辺に、虎華が複数名つけているらしい』

「現場にこちらの戦力は？」

『コードネーム22、23、25と、マクヒョンだけ』

「…悠長にしてる暇は無いわね」

『ああ』

そんな会話をしながらも事務所から駆け出し、停めてあったバイクのエンジンをかける。ヌナにヘルメットを放り投げ、彼女は慣れた仕草でバイクに跨った。

背中に彼女の体温を感じるとき、俺は生きた心地がする。
…彼女には、秘密のことだった。

「飛ばしなさいよ、ジェミナ」

JM「分かってるよ、ヌナ」

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