Crossed Destiny (ページ37)

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『…こちら“23”。保護対象、無事に帰宅。現在“23”“25”“22”が自宅周辺を監視中』

『こちら“13”。了解。引き続き任務を続行せよ』

通信を切り、保護対象の自宅が臨めるビルの屋上で嘆息する。
今夜は何も起こらないといいが。黄龍会はとっくに彼女の家を炙り出しているだろうし、いつ抗争が起きてもおかしくない。

…相手が虎華(フゥーファ)であれば、最悪も最悪だ。
俺だって相手にしたくないね、あんな凶悪殺人集団。

アンカーを柵に打ち込み、一気に地面まで降下する。
下に停めていたバイクに跨り、ヘルメットを被ってエンジンをかける。

連日の任務でなかなかに疲労が溜まってきたが、本業が落ち着いた季節でもあるからまだましか。正直、繁忙期に今のようなことが起こっていたらと思うと気が気じゃない。全く、俺たちの雇い主は福利厚生をもっとちゃんとしてくれよ、なんて決して本人の前では言えないような悪態をつく。

程なくして事務所に到着し、地下に降りるが、彼女の姿は無かった。

…そう言えば、あいつの入院先に面会に行くと言っていたっけ。
そろそろ復帰出来そうだと俺も連絡を受けた。
虎華には痛い目を見せられたものの、無事にあいつが戻ってきてくれることが嬉しい。

あのときヌナが彼を捨て身で助けていなければ、あいつはきっと命を奪われていた。

いつも冷静沈着なヌナが見せた、鬼気迫る表情が忘れられない。
あんなに死に物狂いで救助に向かう彼女を見たのは、あのときが初めてだった。

“彼との約束を果たすまで、私はあの子を死なせない”

そう、誇らしげな表情で言っていた。
あの日のヌナは、遠い日の少女の面影を宿していた。

そんなことを回顧していると、静かな室内に足音が響く。
振り向けばAヌナが少し疲れた表情で階段を降りてきていた。

「ごめんごめん、思ったより時間かかって」

『いいえ。あいつ、元気だった？』

「うん、順調に回復してた。何も心配は無いわ。…で、Aさんの自宅周辺は？」

『今は何も起きていない。このまま夜が明ければいいけど…』

「警戒を解いていい瞬間など無いわ。いつあの子が襲われるか、誰にも読めないんだから」

『…仰る通り。やんなっちゃうね、常に気を張ってると疲れるよ』

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