Crossed Destiny (ページ36)

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物心ついた時から、私は黄龍会の兵器として育てられていた。

朝も晩も分からなくなるほど、射撃や体術の訓練をした。
私と同じような子どもも沢山そこには居た。
当然、外の世界のことなど知らされなかった私は、こんなふうに傷付いて痣を作って、ひたすらに罵倒され続けることが普通だと思っていた。

だがそんな日々も突如として終わりを告げることになった。

漢陽連合が私たちの居た訓練所を襲撃したからだ。

解放された子どもたちは路頭に迷った。
黄龍会と漢陽連合、そのどちらにつくかも、あるいは自由を選択するかも、全ては子どもたちの自由だった。しかし自由の概念など教えられてこなかった私たちは、ひたすらに困惑していた。

何が正義か。何を自分は望んでいるのか。
それを理解する子など誰一人としていなかった。

そのとき、私には決まって食事を隣の席で摂ったり、隣の布団で寝たりする仲の良い子が居た。そしてもう一人、私と同じくらいの成績で常に比べ続けられた、優秀な子も。

後者の子どもは、黄龍会に残ることを選択した。
「力が自分を守るから」とその子は言い残していたと思う。
戦いだけが全てだった私たちにとって、その子の考えは真っ当なものだった。

対して前者の子どもは、自分が何をすればいいのか、何をしたいのかが分からないと嘆いていた。だけどそれはつまり、自分が置かれている環境に疑問を抱いていることを示していた。

私も、同じだった。

自分はこんなところに居るべきではない。
もっと、もっと世界を知りたい。
力など要らないから、権力になど興味は無いから、この高い壁に囲まれた虚無の世界から遠ざかりたいと願った。

そうだ。

…ただ、もっと自分らしく、自分の選択で、自由に生きたかったんだ。

そして私は今、因縁や復讐になどに捕らわれたまま、生きている。

この血が憎いと思っていた。

すべて、運命のせいだと思った。

こんなはずじゃなかった、こんな人生など生きていても意味が無いと、何度も何度も思った。

それでも私をここまで奮い立たせてきたのは、仲間の存在があったから。

そして、

“…俺も、一緒に行っていい？”

“Aちゃん”

“「幸せ」がなんなのか、探しに行きたいんだ”

…あの子との約束を、まだ果たしていないから。

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