Crossed Destiny (ページ33)

今日:582 hit、昨日:782 hit、合計:150,868 hit

・ページ33

.

かつてここソウルでは、二つの暴力団が覇権を争っていたの。

一つはさっき話した黄龍会。
そしてもう一つは、今は無き“漢陽連合(かんようれんごう)”。

両者は戦前からこの街を拠点に幾度も抗争を行い、やがて漢陽連合はアジアの各組織と協力し権力を広める黄龍会に遅れをとってきた。時には併合の話も出たけれど、漢陽連合は一般人への被害をも辞さない凶暴な体制の黄龍会とは相容れない存在だったの。

漢陽連合は、秩序と区分の象徴。
裏社会と堅気に一線を引き、一般人を決して脅かさない。
手にした権力で、恵まれない子どもや弱者たちに手を差し伸べる。

対して黄龍会は、アジアを支配することを目論み、恐怖と暴力で人々をひれ伏させる。方向性が合わないことは一目瞭然よね。

黄龍会と漢陽連合の差が激しく開いてきた頃。
今から20年くらい前の話かしらね。

漢陽連合の資金である1000億ウォンが、何者かによって組織の外に持ち出されたの。

後に、それは黄龍会が奪ったことが判明した。
既に弱体化していた漢陽連合は、頭目(とうもく)…つまりトップへの信頼が揺らぎ、内紛状態となった。そこに黄龍会の襲撃があって、組織は壊滅に追いやられたの。

こうしてソウルは黄龍会が裏から支配するようになった。
そして、弱者は社会から見放され、暴力が、権力が物を言わせる社会になった。

…あなたが居た養護施設、閉園したでしょ。

あそこも、漢陽連合の頭目が経営していたところなのよ。

他にも、何軒も。
孤児院、養護施設にホームレスを受け入れる施設。
全て黄龍会からの圧力で潰されたわ。

ソウルは暴力による支配がまかり通る都市になった。
さらに混沌として、秩序が乱れた。

そして、私…というか

そこに居る9人みんなの話なんだけど。

彼らは、何らかの形で黄龍会に家族や居場所を奪われた。

暴力と恐怖による支配。その被害者なのよ。

この混沌とした時代にこそ、黄龍会の出鼻をくじかなければならない。
漢陽連合に代わる存在が、必要だと。

そうしてテヨンが私たちを集めた。

テヨンは漢陽連合の頭目の息子なのよ。

…命を懸けた、奴らへの復讐。
そして、ソウルから傷付き路頭に迷う人々を無くすために。

それと、漢陽連合が黄龍会に奪われた1000億の話には続きがあってね。

あの1000億は何者かによって、再び黄龍会から奪取されたの。

.