Crossed Destiny (ページ29)

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TY「それから、ここに居ないのが…」

テヨンさんがそう口にした瞬間、天井に繋がっている階段の方から音がした。ここは地下に建造された秘密の場所なのだろう、一般的な物件ではありえない階段の付き方をしている。

天井の扉が開き、ばたばたと足音が降りてきた。
背が高くて、これまた端正な顔立ちをした男性たちが…

…って。

男性たちの最後に降りてきた彼。

途端にあの夜の出来事が思い浮かぶ。

…あの嫌悪感も、嗚咽も。

彼もまた私を見つめていた。

TY「ああ、ちょうどいいところに」

JW「おーっ！目覚めた？体は大丈夫？」

DY「はあ、全く…面倒な事件起こしてくれちゃってさ」

「……あ、あの…」

JH「…体は、もう大丈夫なの？」

…ジェヒョンさん。

あの晩、ホストクラブで会ったのが最初で最後。
もう二度と会わないと思っていたのに。

彼は私を見つめ、微笑んでいる。クラブで見せた笑顔と変わらないその姿が、胸に焼き付く。胸の奥が、ぎゅっと苦しくなる。

ジェヒョンさんはビリヤード台に寄りかかり、少し疲れた表情で前髪をかき上げる。彼の色香に酔いしれた夜が、もはや懐かしく思える。

彼も、仲間なのか。得体の知れない組織で、何をしていると言うのだろうか。

…彼が私に執拗に好意を囁いたのも、お金のためじゃなかったんだ。全部、このネックレスのため。彼らと同じ目的を完遂するため。

なんにせよ、やっぱり彼は私そのものになんか興味が無い。
現実をまざまざと見せつけられて、気分がずんと沈んだような気がした。だけどそんな姿に勘づかれるのも癪だから、顔を上げて平気なふりして、辺りを見渡す。

ジェヒョンさんに気を取られていたけれど、もう一人気になっている人がいた。

長身の、笑顔が愛らしい彼のこと。
私、彼をどこかで見たことある気がした。

JW「Aちゃん、はじめまして！」

「あなたって確か…どこかで見たことある気が、」

HC「おお、さすがスーパーモデル！」

TI「そりゃ今時の若い女の子はみんな知ってるでしょ～」

JW「ふふっ、ジョンウです。芸能活動してるけど、ここに出入りしてることはSNSとかに書いちゃだめだよ？」

にっこり微笑む彼は、モデルのキムジョンウ。最近物凄い人気なんだって、シギョンが教えてくれた。

こんなヤクザまがいの組織に、今をときめくスーパーモデルが居るなんて。私が知らないだけで、この世界は本当に広く、複雑みたいだ。

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