Crossed Destiny (ページ2)

今日:462 hit、昨日:782 hit、合計:150,748 hit

・ページ2

.

その次の日も、また次の日も。

HC「A、昼飯行かない？」

HC「今日の放課後、カフェでも行こうぜ」

HC「漢江で散歩しない？」

…なんて、うざったいくらいヘチャンは積極的に話しかけてきた。そして、そのたびにどこからともなくジェミンがやって来てヘチャンを追い払う。それが日常の光景になっていた。

ヘチャンは大学の人気者だ。愛嬌があって、ノリも良くて、誰とでも仲良くなれるやつという印象だが、その一方で何やら怪しげなバイトをしているとか、夜の街に頻繁に出入りしているだとか。彼に関する良くない噂が立っていることもまた事実だった。

別に、表面的な付き合いをするには悪いやつでも無い。彼に関する噂も事実かどうかなんて確かめようが無いし、心底どうでもいいと思っていた。

が、彼は決まってネックレスについての強い関心を見せる。

そのたびに、私はいつしかどうしようもない不安感に襲われるようになった。

だって、ヘチャンの本当の目的は、きっと私自身ではなく“私に関連する何か”だ。

…私は、私自身のことをよく知らない。
私を取り巻くように蠢く何かを、ヘチャンは知っている。それが不気味だった。

それに、少しはヘチャンから関心を持たれてるのかなって、最初は嬉しかったけれど。彼が欲しているのは私ではなく、ネックレスだった。

私はやっぱり、いらない子なんだと。

求められないことが、辛かった。

HC「そのネックレス、いつもしてるけど」

「…うん」

HC「何か理由はあるの？」

「それは…これ、取り外しのパーツが無くて。外せなくなってるの」

今日もヘチャンは私の隣の席にやって来て、しきりにネックレスを気にしている。まじまじとネックレスを見つめる視線は真剣そのもので、こんな古びたネックレスにそんな価値などあるのかと、不思議に思う。

誰に貰ったのかも憶えていない。いつ取り付けられたのかも。
なぜこれを見せてはいけないと施設の人に言われたのかも、理由は分からない。私の首に重くのしかかるような、呪いのチェーン。

HC「そうか…外せないのか」

ヘチャンは冷ややかな目で頷いたあと、いつものようにくだらない世間話をし始めた。それでも私の心はずっと、ざわざわと音を立てたままだ。

その温度の無い瞳が、ヘチャンの本来の姿なのだろう。

なんとなく分かるのだ。

彼は、私と住んでいる世界が違うのかもしれない、と。

.