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「…！」
ページをめくって、すぐ目に入った名前。
私は何故かほっとすると共に、どうしてだろうか、…少し、感動した。
そうか。
ようやく、ユニットでデビュー出来るんだ。
私はそっと微笑みを取り戻す。
それだけ彼は、私の安定剤のような存在。
“钱锟”
「クンさん…やっと固定されたグループでデビュー出来るんですね」
『ああ』
「良かった…」
自分より他人のことを思って喜ぶ、なんて こんなの私らしくないけれど。
だけどクンさんは格別だ。
まるで私の保護者のような彼が、これまでどれほど努力して、何度挫折して、そのたびに立ち上がってきたのか。私はそばで見つめてきた。
私の口から漏れた安堵の声に、プロデューサーも穏やかな様子で頷いた。
「…オッパ！？」
『そうだ、ウィンウィンも…』
「待ってください、…本当に、ウィンウィンオッパ？」
『そうだと言ってるだろう』
「…うそでしょ…」
クンさんのデビューに感動していたのも束の間、
私はその下に綴られていた“董思成”の文字に、思わず腰を抜かしそうになった。…そんなことは絶対しないけれど。
それにしたって、まさかオッパが、このプロジェクトのメンバーだなんて。
「オッパ、今はNCT 127に所属してるじゃないですか…」
『ああ』
「ああって…これから韓国での活動はどうするんですか？」
『来年秋の正規アルバムの活動を最後に、中国活動に一旦は専念することになる』
「…」
…そう、なんだ。
私より後に韓国へやってきたオッパは、
大変な思いを沢山して、だけど自分の力で全て乗り越えようと頑張ってきて。
ようやくイリチル先輩の活動が軌道に乗ってきて、オッパが自分の力で今の地位を確立したのに。それに、ユウタくんとか、テイルさんとか、ジェヒョンとか、オッパのことを大切に思ってきてくれた人たちは、どんな心境なんだろう。
この新しい挑戦を、私も応援すべきなのか。
オッパの気持ちを確かめぬ間に、私は手放しでこのことを喜べない気がした。
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作者名：れいら
| 作成日時：2022年3月7日 18時
