#8 ページ8
「今までありがとう。ずっと応援してる。頑張れ」
あまりにも、簡単な文章。
けれど、これが本心だってことは痛いほどに伝わってきた。
メンバー皆そうだったと思う。
皆Aヒョンの言葉に涙を浮かべて、それでも出来るだけ笑顔で別れようと頑張っていた。
それはAヒョンも同じだった。
7年間、ルキズ時代を含めると10年近く共に過ごす間で、この人の涙を見たのは今日が初めてだった。
「…じゃあ、俺もう行くね。この後のスケジュールも頑張って」
そう言って扉に手をかける。
扉を開き、部屋を出る直前、ふと振り向いたAヒョン。
しかし、何かを言う前にマネヒョンが雑に扉を閉めた。
加えて、ため息。
まるで、俺らとAヒョンとの時間を面倒臭がっているような、そんな態度。
隣からチッと舌打ちが聞こえた。
思わず自分の耳を疑う。
だって隣は、テイリヒョンだったから。
ﾏﾈ「おい、今舌打ちしたの誰だ？」
明らかに苛ついたマネヒョンがメンバーを見回す。
テイリヒョンは、迷うことなくスッと手を上げた。
TL「すいません、唇弄ってたら音鳴っちゃいました」
ﾏﾈ「はぁ…唇荒れてんだったらリップ塗れ。手で弄るな」
テイリヒョンの言葉で、故意にしたものではないと分かったからか、少し機嫌が戻ったマネヒョン。
隣だから分かる。
あの時テイリヒョンは決して唇を弄ってはいなかったし、
マネヒョンには聞こえていないけれど、ボソリと呟いていたのも聞こえた。
�犹箸ぜ里討澆燭い飽靴い笋�って��
普段のテイリヒョンからは考えられないほどに乱雑な言葉遣い。
声色だけで恨みが伝わってくる。
…テイリヒョンは、Aヒョンの脱退について何か知ってるの？
そんな疑問について深く考える暇もなく、すぐにスケジュールについて話される。
リーダーの俺が気を抜いているわけにもいかず、慌てて意識を仕事に向ける。
控え室を出る頃には、さっきのテイリヒョンの発言はすっかり忘れていた。
辞めた理由は、後から聞けばいいと思ってた。
連絡先だって知ってる。
まさか、この先ずっと連絡がつかなくなるなんて、この時はまだ知る由もなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 712人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：揚羽 | 作成日時：2023年8月16日 18時
