No Name【NCT】 (ページ5)

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それから、月日が過ぎるのは早かった。

事務所は早々に俺たち〝20人〟の再契約と、Aヒョンの契約解除を発表した。

シズニはもちろん悲しんでいたし、事務職問わずたくさんの同業者たちからも連絡が来た。

そして迎えた、SMTOWN最終日。

……Aヒョンの、最後の日。

終盤のトークタイムで、司会をしていたベッキョニヒョンがAヒョンを呼んだ。

ﾍﾞｯｷｮﾝ「Aー！！！」

「ヒョン、マイク越しにそんな大声出さないでㅋㅋ」

ｳﾆｮｸ「あ、待って耳が…」

ベッキョニヒョンとすぐ隣にいたもう1人のMC、ウニョギヒョンが耳を塞ぐ。

…まぁあの音量をマイク通してあんな近距離で叫ばれたら誰だってそうなるだろう。

メインボーカルの声量を舐めてはいけない。

名前を呼ばれたAヒョンは、嬉しそうにベッキョニヒョンに駆け寄る。

ｳﾆｮｸ「じゃあトークの締めをAにお願いします」

「え、俺ですか？！」

いきなりのAヒョン指名に、普段の締まらない長男ぶりを知っているシズニたちは心配の声と笑いがこぼれる。

それはもちろん、俺らメンバーだって例外じゃなくって。

今日が最後のAヒョンだから、きっとわざわざ時間をくれたんだ。

「えー…、ご指名を受けましたNCTのAと申します…、えー…」

ﾃﾐﾝ「Aー！頑張れー！」

テミニヒョンの応援に、歓声があがる。

応援を受けた本人ははにかんで、その顔がカメラに抜かれアップで映された。

それにまた歓声をあげる会場。

…ステージ上からも歓声が聞こえたような気がするのは気のせいかな。

ﾋﾁｮﾙ「A！キヨウォ！♡」

ｳｪﾝﾃﾞｨ「Aー！」

ﾁｬﾆｮﾙ「A、リラックス！」

ﾍﾞｯｷｮﾝ「ステージ上にもファンがいますねー」

どうやら気のせいではなかったみたい。

たった1つの動作で会場が沸く。

こんなに、アイドルになるために生まれてきたような人なのに何故自ら辞めるのかが分からない。

「えー、締め方がよく分からないんですけど、まずは本日お越しいただいてありがとうございます。
皆さんのおかげで僕たちもすごく楽しい公演にできたと思います。どうかこれからも、彼らSMファミリーを愛してくださったらと思います」

今の言葉で、違和感に気付いた人はどのくらいいただろうか。

Aヒョンの言った〝これから〟に、Aヒョン自身は入っていなかった。

〝彼らSMファミリー〟

まるで他人事だ。