Part.4 ページ11
［ ※作中で少しだけ怪談に触れています ］
出口へ着き、車へと乗り込む。
運転するよって言われたけど、心拍数160超えの人に任せるなんて、それこそ今日イチの恐怖だ。
て「あーもー怖かった…」
弱々しい声を出して、腕を伸ばして抱きついてくる。
珍しくシャンプーのいい匂いがして、背中をぽんぽんと優しくたたいた。
それに気を良くしたのか、さらにぎゅうぎゅうと両腕で締めつけられて。
「ちょっと離れようか」
て「やだ、一生離さん」
「じゃあ一生心霊スポットから帰れないけど」
て「うっ…」
心霊スポット、という言葉に反応したてっちゃんがびくっと肩を揺らす。
そして、名残惜しそうに腕をほどいた。
代わりに、てっちゃんが安心できるようにルームランプをつける。
そして、車内が明るくなったことによって。
て「…あれ？A、パーカー裏返しやん。暗くて気付かんかったけど」
「あ、本当だ、あはは」
て「えっ…なにその棒読み」
「ねえ、知ってる？」
て「なにを…？」
──生きることと死ぬことって真逆じゃん？
だから、幽霊の行動は生きている人とはすべて
が真逆なの。
例えば、手の甲で拍手したり、後ろ向きに歩い
たりさ、
「……服を裏返しに着たり、さ？」
て「……へ、」
「さあ、帰ろうか」
ぴしりと固まったてっちゃんをよそにエンジンをかける。
そして、ギアを
ゆっくりと、車を後ろ向きに走らせる。
て「え、まっ、待って、待ってなんでバックすんの！？」
「話、聞いてなかった？」
おもしろいくらいに青ざめるてっちゃん。
そこで一旦車を停めて、カーナビをDVDモードに切り替え、再生。
その瞬間、某有名ホラー映画の名シーンが大音量で流れ出す。
髪の長い女が、階段を……
て「だあああ！Aのいじわるっ、もうやだあああ！」
大声を出したかと思えば。
助手席のドアを勢いよく開けて、そのままトンネルの中へと走っていった。
…え、なにそれウケる。
めちゃくちゃ克服しとるやないか。
数分後、りょうくんからの着信が。
り「A？てつやになにしたん？こいつ泣きそうなんだけど、てか泣いてる」
対照的に、りょうくんはげらげら笑っていて。
一連の仕掛けを伝えれば、スピーカーにしていたのか、虫さんの爆笑とてつやのわめき声まで聞こえてきた。
ごめんねてっちゃん。
一ヶ月間くらい優しくするから許して。
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作者名：V
| 作成日時：2018年11月19日 21時
