橙ルート9 ページ9
「昨日なんかあった?」
「いやぁ…どうだろ…」
「もー、顔色悪すぎ。なんでそんなに体調悪くなるまで飲んだの」
「まぁいろいろと、はは…」
「だからそのいろいろを聞いてんだけど」
話せば楽になるかもよ?
唇の端をニッと持ち上げて。
「話すまで解放しないぞってこと?」
「人聞き悪いなぁ。んー、なんだろうね。失恋でもした?」
くくっと笑って、こてんと首をかしげる。
「しつれん…」
「え、マジで?本当に?失恋、え?」
「失恋した…」
「待って、それは待って」
俺さ、てっきり…
そこで口をつぐむりょうくん。
「…それてつやが知ったらやばいよ」
まさかの、そのてつやさんが失恋のお相手なんですけどね。
「Aの好きなやつ?なにそいつ消す!とか言って殴り込みそう」
「それは怖すぎるから絶対内緒ね?」
りょうくんの頭の中では、てっちゃんの好きな人=私という等式が成り立っているらしい。
まぁ、普段のてっちゃんのふざけた態度だけ見ればそう思ってしまうのかもしれない。
「ごめん、俺交代しんと」
急にりょうくんが立ち上がった。
「あ、そういやとしみつ放ったらかしじゃん」
「そっちもだった」
そっちも?
そうたずねる前に、りょうくんは急いでキッチンへと去っていった。
そして、入れ替わるように入ってきたのは。
「てっちゃん、」
「りょうとふたりでなに話してたん?」
「…ごはんの約束」
うそつき、むすっとした顔でてっちゃんが言う。
顔を覗き込まれ、今日初めてばちっと視線がぶつかった。
「りょうには話せて…あの男にも話せて、でも俺には話せん?」
あの男?ん、どの男…?
それにりょうくんにもふわっとしか伝えてないけど。
「悩みごとなら俺にも相談乗らして」
悩みごと、か。
それならどれだけよかったかな。
だってまだ、解決への希望を持てる。
「俺になにかできること…」
「できないよ、なにも」
自分でも驚くほどの冷たい声が出る。
「なんで?そんなん聞いてみんとわからんやん」
優しさが、痛い。
「無責任なこと言わないで。悩みごとじゃなくて、不幸話なの、これは」
そんなに私を助けたいなら、あの子じゃなくて私を選んでよ。
そう言えたらなにかが変わる?
せっかく張った心の防衛線、越えてこないで。
「でも俺は、」
「てつやー!」
口を開くと同時に、向こうから彼を呼ぶ声が聞こえる。
なにか言いたげなてっちゃんに、早く戻るように促す。
ごめん、とだけ残して、てっちゃんは部屋から出て行った。
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作者名:V | 作成日時:2018年10月29日 17時