【東海】Deep Down (ページ29)

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青ルート２ページ29

そこは最近できたばかりのイタリアンレストランで。
シックな色合いでまとめられた内装、落ち着いた雰囲気が漂うゆるやかな空間。

一通り注文し終えてから、やっぱり思う。

「りょうくんってイタリア人だよね」
「その雑ないじり今いらんから」
「いや本気で考えた結果だよ」
「Aの本気の思考回路はどうなってんの」

りょうくんが笑う。
困ったような、怒ったような笑顔。
天使の微笑み。
さっきまでの悪魔っぷりはすっかり息を潜めている。

好きな人と、おいしいごはん。
幸せすぎて思わず頬が緩む。

そんな私を、りょうくんがじーっと見つめる。

「な、なに？」
「いーや？うまそうに食べるなと思って」
「うん、だっておいしいもん」
「そんなに気に入ってくれたんなら、あいつらも連れてくればよかったかなぁ」

ね、と同意を求められる。
え…いや、うん。どうだろう。

曖昧な返事をする私を見て、満足そうに目を細めるりょうくん。
…やりやがった！今度は小悪魔モードか！

「こんなおしゃれなお店にみんなで来たら絶対浮くよ…特にてっちゃんとか」

半分言い訳で半分本気。
あんな奇抜な格好の男が来たら、東海オンエアってことを差し引いても目立つと思う。

「じゃ、やっぱ俺らだけで来て正解？」
「そうじゃないかな…」
「このお店に合う二人だってこと？」
「うん…？」
「それってさ、」

少しの間の後。

「つまり俺ら二人はお似合いだってことでいい？」

りょうくんが周りに目を向ける。
つられてお店の中を見回し、遅れてその言葉の意味を理解する。

うわあ…！カップルしかいない！
なんで今まで気付かなかったんだってくらい、見事に。

ハッとして視線を戻す。
またからかってるんでしょー！って目で訴えてみる。
のに。
きりっとした表情を崩す気配がない。
いつもみたいに、ふふんって笑わない。

え、ええ、調子狂う。

「えっと…あ、私たちが一番普通だもんね？」

逆に似合わないのは、もちろんてっちゃんと、他はゆめまるとか？居酒屋派だし！
慌てて付け足す。

りょうくんの言う「お似合い」は男女間の意味であって、お店の雰囲気に合う人物かどうかを指してるわけじゃないのはわかってる。

だからこそ、ごまかすしかないのに。
なんでそんなに難しそうな顔してるの？
いつもみたいに笑い飛ばしてよ。

だって私たちは、別に付き合ってるわけでもなんでもない。
ただ一方的に私がりょうくんを好きなだけ。
彼の言動には、踊らされちゃ、いけない。