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緑ルート9 ページ23

ふたりそろってソファーに腰をかけなおす。

静寂。
無言。

「で?」
「で…?」

さっきのほのぼのとした空気とは一転。
唐突に、なぜかちょっとぴりぴりムード。
なんで?

「さっきの電話のこと」

不機嫌そうに言葉をつむぐとしみつ。
電話って…!
やっぱりずっと起きてたんじゃん!

「フラれたん?」
「…へ?私?」
「電話で言っとったげや、好きだの付き合ってだの」

え?
さっきの電話って、てっちゃんとのことだよね?
私、そんな恋愛ワード出し…

てたわ。
好きだの付き合ってだの言ってたわ。
付き合って、は恋愛的な意味じゃないけどね。

その二言だけを切り取られたおかげで、見事に変な方向へ勘違いされている気がする。

「待って。好きと付き合ってしか聞こえてないくせに、なんでフラれたって思ったの?」
「家来たときからずっと辛気くさい顔しとったし。最初から見込みなかったんかなって」
「言い方…さっき心配したって言ったのに…」
「そりゃ負のオーラ漂いまくってたら心配もするって。俺にも移るやん」

えぇ。
なんか急にすごい意地悪なんだけど。

「いや負のオーラなんて、」
「いいって、無理せんでも」
「はぁ?ていうかそもそも私、電話で告白するタイプじゃ、」
「お前も落ち込んでんのに、急に呼び出したりして悪かったな」

食い気味に返される。

「ねぇ!聞いてってば!」
「嫌」
「なんで?」
「どうでもいい」

拒絶。
誤解すら解かせてくれないの?

「自分から聞いてきたくせに、ひどくない?」

すがるように横顔を見つめる。
としみつが、ゆっくりとこっちを見る。

「…どうでもいいんだよ、知らねぇ男の話なんて」

その目が、私をとらえる。

「忘れろよ、そんなやつのこと」
「としみつ…?」
「無理なら、俺が。今から忘れさせてやる」

いつの間にか、腰には腕が巻きついていて。
片方の手で肩を抱き込まれる。

え…なんで、
どうしてこうなったの。

混乱する私をよそに、肩にまわされていた手がするすると上がってきて、がっしりと後頭部を固定される。

でも、この先を…この意味を、私は知っている。
大人だもん。
お互い恋愛に敗れたもの同士、傷を舐め合おうってこと。
心にぽっかりと空いた穴を、とりあえずは手近な人間で埋め合わせようってこと。

目の前のとしみつは、無表情。
なのに、どこか泣きそうで。
拒めば、壊れてしまいそうで。

だんだんと、距離が縮まる。

…もう、いいかな。
一番になれないなら、せめて二番でも。

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作者名:V | 作成日時:2018年10月29日 17時

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