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緑ルート7 ページ21

ソファーの下に座り込んで、ふわふわと頭をなでる。

彼女となにがあったのかは知らないけど。
聞けないけど。
今だけはこうやって触れること、ゆるしてね。

「…ねぇ、」

口を開きかけた瞬間、ポケットの中の携帯が静かに震えた。
あれ、てっちゃん?
としみつを起こさないように、廊下まで移動する。

「どうしたの?」
「介抱に苦労してないかなーと思って?」
「わかってんなら付き合ってよ!」
「えーそれはやだ。やっぱ振り回されてる感じ?」
「振り回されてるっていうか、フラれたっていうか」

え。なに言ってんだろ私。
今の発言はやばくない?
酔ってんのかな…全然飲んでないけど。

「やっぱ好きやったん?」
「え、」
「としみつのこと。見とったらわかる」
「…えぇ!?」

あっさり受け入れられて、思わず大きな声が出る。
てっちゃん、意外とまわり見てるタイプ?

「フラれたってことは、あいつに彼女おるってこと?」
「うん…」
「聞いたことないけどなぁ」
「めっちゃ隠したがってたもん」
「えーなんかそれ怪しくない?」

電話の向こうで、小さく笑う声が聞こえる。

「ちょっと!真剣なのに!」
「ごめんごめん!でも、好きなんでしょ?まだ」
「好きだよ…」
「じゃあいいやんそんままで。願い続ければ夢はかなう!」
「バカうざい…もういいよ、切るからね!」
「んじゃ結果報告よろしくー!」

腹が立つだけの電話だった。
なんでそんなに楽しそうなんだ。

携帯を握りしめて、再びとしみつのもとへ。
起きる気配はない。

ソファーに顎を乗せて、寝顔を間近で見つめる。

てっちゃんは、好きなら好きなままでいいって、そう言うけどさ。

そうじゃないよ。
嫌いになれないんだよ、どうしても。
諦められないんだよ。

いくら彼女にフラれかけて、酔っ払っていたかもしれなくたって。
わざわざ家に呼ばれたら。
キスなんてされてしまったら。

他の女の人だったら、絶対勘違してるんだからね。
私には、勘違いできる自信すらないけど。

でも。

長い睫毛。
すっと通った鼻筋。
口元のほくろ。

今だけは、私がひとり占めしてもいいよね?

「…なぁ、そんな見られると照れるんですけど」
「っ、ねぇ!寝たふりはなしでしょ!」

慌てて飛びのいて、手を引っ込める。
えええ、恥ずかしすぎる!

「え?なんのこと?俺今起きたばっかなんですけど?」
「うそつけ…!」

顔をひきつらせる私。
それを見て、にやにや。
としみつが、片方の口角だけをつりあげた。

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作者名:V | 作成日時:2018年10月29日 17時

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