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緑ルート2 ページ16

としみつが出て行ってから、かれこれ二時間が経つ。

残ったメンバーで晩ご飯ジャンケンをした結果、いつものラーメン屋へ。
そうして夕食を済ませ、みんなでてっちゃん家へ戻ってきたのが数分前のこと。

「まじで無理、ほんと無理…」
「今日の戦犯きつすぎる!」

しばゆーがげっそりしている隣で虫さんが叫ぶ。
ラーメンがリバースする!とかなんとか。
それを見て私に視線を寄越すりょうくん。

「でも真の大戦犯はAだからね?」
「え、私?なんで?」
「運転荒すぎ、バカ酔ったんだけど」

その苦言に、うっと言葉がつまる。
さっき失恋したせいで…とは口が裂けても言えない。

「運転したら性格変わるタイプじゃなかったよねA…そんなにジャンケンに一人負けしたのが悔しかった?」

てっちゃんがつらそうに笑う。
見当違いもいいところだ。

「知らないよ、私に無理やり運転させたみんなが悪いんじゃん」
「一人負けしたんだから当たり前じゃね…?」

苦しそうにしばゆーがうめく。

「食べすぎて苦しそうだったから、吐きやすいような運転してあげただけじゃん」
「やいやい!誰の車だと思っとるんだ!」

そういうてっちゃんの顔色も真っ青だ。

…しょうがないじゃん。
ふざけ倒してるようにしか見えないかもしれないけど、今になって涙が出てきそうなんだよ。

あの会話を、嬉しそうなあのとしみつの声を思い出すたびに、私だって吐きそうになるんだよ。

それでも、家には帰りたくなかった。
今ひとりになる勇気はない。

「としみつがいたら絶対ブチギレてたよ」

虫さんが出した名前に耳が反応する。

「あいつだけラーメン回避しやがってあんにゃろー!」
「うまいメシ食いやがって!」
「いや、ラーメンも食べすぎんかったらうまいでしょ」

てっちゃんとしばゆーに、りょうくんの冷静なひとことが刺さる。

はあ。
今頃彼女とおいしいごはん食べてるのかな。

「A?どした?」
「えっ?」
「急に黙るやん。今さら気分悪くなった?」

てっちゃんがにひひって笑う。
まぁ、気分悪いのはずっとかな…

「自分の運転で酔ったかもしんない」

そう返せば、みんながどっと笑う。
少しだけ気が楽になる。
少しだけ現実から目を背けられる。

そのとき。
私の携帯に、着信を告げる音楽が流れた。
ディスプレイを覗けば。

薄れかけた憂鬱に、心が一瞬で支配される。

「…もしもし、としみつ?」

みんながいる手前、無視することなんてできなくて。
震える声を抑える。

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作者名:V | 作成日時:2018年10月29日 17時

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