【東海】Deep Down (ページ12)

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橙ルート１２ページ12

「中途半端？なにが？」
「えーっと、それは…」
「そんなに私に知られたくない内容？」
「まぁ…そんな感じ」

…なんなの。
のろけてんの？彼女と俺だけの秘密だってこと？

「今さら隠す必要ないじゃん、もう彼女できたってみんなにもばれたんでしょ？」

思わずがばっと起き上がって言う。

「彼女？誰の？…虫さんの？」
「虫さ…？は？」
「ん？」
「え？」

話が噛み合わない。
お互いに顔を見合わせること、たっぷり3秒。

「…ねぇ、Aさ、絶対勘違いしてる」
「なにを？」
「まず、昨日一緒にアクセサリー見てた女の人は俺の彼女じゃないからね？」
「…ん？」

…どういうこと？
理解が追いつかない。

「いやいや、虫さんが言ってたじゃん。てっちゃんが彼女と名古屋行ってたって…」
「あー、あれは虫さんの彼女とって意味」
「は…？」
「まぁ、俺の彼女って意味に聞こえるように言ったんだろうけど…」

黙ったままの私を見て、てっちゃんが続ける。

「俺、女の子の好みとか全然わからんくてさ。どうしようかなってなって、虫さんの彼女の助けを借りようと…」

嘘をついているようには見えない。
いや、でも。
じゃあなんで女の子の好みを知る必要が…

「あ。アクセサリーを贈る相手が彼女ってこと…？」

あぁ、結局そういうこと。
もう一度肘掛けに倒れこむ。

「…だったらいいんだけどね？」

ふっと声色が変わって、てっちゃんがまっすぐ私を見る。
切なげに揺れる、あのうるうるした瞳で。

縫いつけられたみたいに、動けない。

「…か、片想いなの？」
「どうだろ。わからん。聞けば教えてくれるかな…」

じりじりと距離をつめてくるてっちゃん。
私をじーっと見て目をそらさない。

え、え。
なんでそんな目で私を見るの？
なんでこっちに来るの？
私はその女の子じゃないよ。

気付けば、お互いの吐息がかかるほどの近さで。
唇と唇が、もう少しでくっついてしまいそうで。

てっちゃんが、ごくりと息を飲む音でハッと意識を取り戻す。

「やだ、」

私越しに誰を見てるの？

「俺もやだ」
「なにが…！」

ぴくり、てっちゃんの動きが止まる。

「んなの、ここでお預けくらうことに決まっとるやん」
「だからって、私を代わりにしないでよ…」
「…えっ？ちょ、なんでそうなるの！」

ぐっとソファーが沈む。
てっちゃんが小さく息を吸った。

「俺が好きなのは、Aだけなんだよ？…ずっと」

少し焦ったように口走る姿を見て。
私の頭は、完全にフリーズした。