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橙ルート11 ページ11

「…昨日のこと?」
「名古屋駅でのこと!」

一度溢れ出したらとまらない。

「名古屋駅って…」

てっちゃんがハッとする。

「A、その話リビングで聞くから」
「いいよもう…」

腕を引かれて、必死で抵抗する。
てっちゃんの動きがピタリと止まる。
私の力も少し弱まる。

「うーん…じゃあ、」
「…え?」

緩めた手を振りほどかれる。
てっちゃんが私の膝裏に腕を差し込み、そのままひょいと抱き上げた。

いわゆる、お姫様抱っこ。

「やだ降ろして!」
「だって言うこと聞かんもんA!」
「聞きたくないもん!」
「だからこーするしかないの!」

じたばた暴れても、やっぱり男の人の力には勝てないわけで。
あっという間にリビングに連れて来られる。

ぽすん、と背中にやわらかい感触。
見上げた先は天井。

「落ち着いた?」

ため息を吐いて小さく頷く。
逃げ道は、ない。
先に切り出したのは私だから、この結果はしょうがないけれど。

ずるずると上体を起こして、肘掛けにもたれかかる。

「名古屋駅とか言っとったけどさ」

てっちゃんが話し始める。

「今泣いてんのは…その、不幸話?」
「不幸話?」
「悩みじゃなくて不幸話なんでしょ?」
「あぁ…」
「あの男のせい?」
「…それ、昼も言ってたけど誰?」

いまいち要領がつかめない。

「昨日名古屋駅歩いとったやん、金髪の男と」
「金髪…?あ、」

まさかあの視聴者さんのこと?
え…見られてたの?

「あの人はなんにも関係ない!」
「ふーん、朝遅刻までしてきたくせに?」

探るような目。
言葉の裏の意味を察する。

「なんでそんなこと言うの…」
「彼氏じゃないの?昨日急に帰りたがったのはそいつに会うためじゃなくて?」
「違うよ、彼氏なんていないよ…」

なんで失恋した相手に、彼氏がいないことを弁解しなきゃならないの…

そんなに疑うなら。

もう…正直に言ってやる。
今なら言える気がする。
それに、どの道もう引き返せない。

「私が帰りたがったのは…てっちゃんの帰りをひとりで待つのが寂しかったからだよ」
「…へ、」
「なのに?その本人は名古屋で楽しそうに女の人とアクセサリー選んでるし?」

責めるように言い放てば、私を見下ろすてっちゃんの目にとまどいの色が浮かんだ。

「もしかして、見とった?」

ちょっとだけ怖い顔。

「会話は?聞いた?ねぇ?」
「それは聞いてない…お店の前通りかかっただけだもん」
「そっか…うーん、中途半端だな…」

複雑そうな顔で、そう言った。

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作者名:V | 作成日時:2018年10月29日 17時

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