【東海】Deep Down (ページ34)

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青ルート７ページ34

先ほどのショックな事件を伝える。

「でね、昨日は私のこと抱きしめてきたのにね…」
「わあ大胆」
「さっき車からかわいい女の子と降りてきて…」
「あらあら」
「そのまま家に入ってった…」
「ひいー！」
「この話もう忘れたい…仕事は？どんな感じ？」

今度は彼女が会社の愚痴を語りだす。

かれこれ三時間くらい話して、お開きに。
帰宅してから数分後、一件の通知が届く。

『どーせ泣くんでしょ？寝る前に目冷やして、朝起きたら蒸しタオルね！』

…さすが。
ご丁寧に蒸しタオルの作り方まで。

そのままお風呂に入って、不毛なことを考える。

──お前しかおらんわ。

りょうくんのあの言葉。

うらやましい。
優しさだけじゃなくて、愛情までもらっているあの子が。
ずるい。

もし、借りた上着をあの場で返しに行っていたら、一体どうなっていたんだろう。
慌てる？彼女に弁解する？
それとも…私に彼女を紹介する？

頬をなにかが伝う。
お湯なのか汗なのか、涙なのかもわからない。
視界がかすむのはきっと湯気のせい。

そう言い聞かせていたら、本当に頭がくらくらし始めて、急いでお風呂から出る。
昨日と同じ理由でのぼせても、その内容は大違い。

この憂鬱も、シャワーで洗い流せたらいいのに。

ドライヤーと歯磨きを済ませる。
意味もなく、あの上着をもう一度洗ってやった。

さすがにしっかりうちの柔軟剤の匂いに染まったでしょ。
ふん、彼女に見つかって疑われちゃえ。

自己嫌悪に陥る前に、助言通り目を冷やして布団に入る。
今頃ふたりは…そこまで考えてぶんぶん頭を振る。

もう寝よう。
無理やり目を閉じる。
泣き疲れたせいか、すとんと意識は落ちていった。

朝。
目を冷やしたおかげか、蒸しタオルはいらないくらいに目の腫れはひいていた。
ただ、眠すぎて目は開かないけど。

彼女にお礼の返事をしようと、布団から手を出して携帯電話を掴む。
あれ、メッセージがきてる。

「…え」

相手の名前を見て、固まる。

『渡したいものあるんだけど、今日の夜会えん？』

私、寝ぼけてる？
目をこすってもう一度見る。

…りょうくんからだった。

昨日の今日で、会えと…？
どんな顔して？私笑えないよ？
でも、渡したいものって？

淡い恋心がうずく。
直後、またあの場面を思い出す。

しらない…りょうくんなんてしらない。
あの人だけしかいないんでしょ。

やめてよ。
もう私を期待させないで。

既読だけつける。
ひどい眠気に襲われて、再び意識を手放した。