【東海】Deep Down (ページ32)

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青ルート５ページ32

まばゆい陽の光で目が覚める。
時計を見ればもう昼前で。
久々によく寝たなあとゆるゆる起きる。

えーっと、昨日私何時に寝た？
お風呂でバカみたいにそれまでのできごとを振り返ってたら、いつの間にかのぼせちゃって…
お風呂あがっても気だるいままで、そのまますぐに寝ちゃったから…

あ、やばい。
上着のこと連絡できてない！

慌てて携帯電話を開く。
と、今晩会う友達からのメッセージ。

『今日ちょっと早上がりできそうだから、18時にはお店着けそう！』

ん、待てよ？
今日飲む予定のお店って、そういえばりょうくん家の近所じゃなかったっけ？

ネットでお店の住所を探す。
やっぱり！
徒歩圏内だ。

お店に行く途中にりょうくん家へ寄ろうかな。
予定があるって言ってたから不在かもしれないけど。
気を遣わせそうだし、家に寄るまでは連絡入れないでおこうっと。

それからは、洗濯したり掃除をしたり。
録り溜めていたドラマを見たり。

一番星が浮かび上がってきた頃、家を出る。
電車に乗って、まずはりょうくん家。

遠目から部屋の窓を見る。暗い。
やっぱりお出かけ？
インターホンを押しに行くか迷う。

そんな私の視線の先に、白のワゴン車が一台停まった。
見覚えのある…いや、ありすぎるその形、色。
胸が早鐘を打つ。

駆け寄ろうとして、とどまる。
助手席側のドアが開いて、女の人が降りてきたから。

そして、運転席からは。
これまた見覚えのありすぎる、私の頭の中を占めてやまないあの人。

反射的に物影に隠れる。
ちらりと覗く。
女の子の手に提がった大量の紙袋を、りょうくんがさりげなく自分の腕にかけた。

ねえ、そういうところだよ。
自然にそんなことができるところ、すっごく好き。
…なのにな。

同時にそれは、女性慣れしていることの裏返しでもあって。
誰にだって、ああやって優しくしてるんだ。

浮かれていた気持ちがいっきに沈む。
ふたりの会話が風に乗って、途切れ途切れに運ばれてくる。

「今日はありがと！」
「俺のセリフだけどね」
「どうせモテモテなんだから、私以外にもいっぱいいるんでしょ？その人と行けばいいのに！」
「ねえうざい、お前しかおらんわ」

ほんとー？
ほんと！
楽しそうに笑ってる。

そんなのって、ないよ。
誰にでも優しいくせに、りょうくんの気持ちはその子だけにあげるの？

呼吸のしかたを忘れたみたいに、息がつまる。

そのまま、ふたりは家の中へと入っていった。
その背中をぼーっと眺める。

風が、冷たい。