イタリア人には敵わないというお話です ページ45
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薄暗い照明。
ゆるやかに耳を刺激するジャズ。
目の前にはふたつのグラス。
「りょうくん…ここおしゃれすぎない…？」
り「一回Aを連れて来なきゃなーって思ってたんだよね」
「私てっきり、近くの焼肉屋とかラーメン屋に行くのかと…」
り「なにそれ、楽しみにしとってって言ったじゃん」
りょうくんが、ふふんと笑う。
まぁね、あなたはイタリア人だし？
多少おしゃれなレストランに行くのかも、なんて思わなかったわけじゃないよ？
でも、それがなんだ、この洒落たバーは。
マジでイタリア人じゃないか。
「だからイケメンなんだよりょうくんは…」
り「はいー？そりゃずっと前から約束してたんだし、近所で済ましたりはしんでしょ」
そう、今日はメンバー全員がオフで。
一ヶ月前から、この日はご飯行こうねってりょうくんと約束していたのだ。
隣を盗み見れば、こく、と喉を動かしてショットグラスを煽るりょうくん。
「お酒飲んでるだけで絵になるねぇ」
り「もーなにそれうざ。で、このお店気に入ってくれた？」
「もちろん！私こう見えてカクテル好きだからね」
り「そんなん知ってるに決まってんじゃん、だから連れてきたのに」
「え…それは惚れた…」
り「ちょろいなぁ」
そう言ってくくっと肩を震わせる。
り「次なんか飲みたいのある？」
手元のメニューを私のほうへ向けて広げる。
そういうさりげない気遣いがイタリア人。
「あ、いいこと思いついた！」
り「ん、なに？」
「お互いのイメージのカクテル贈り合わない？」
り「色とかカクテル言葉ってこと？」
「そう！」
り「いいじゃん、楽しそう」
ベタな思いつきだけど、普通に頼むよりも楽しめる気がする。
数分間、携帯とにらめっこして。
相手にカクテル名を知られないよう、メニューの写真を指差して店員さんに伝える。
ウザ客でごめんなさい。
そして、先に出てきたのは。
り「はい、Aには��キール��」
「え、これめっちゃ好き！」
り「まず色が赤でしょ。で、カクテル言葉は…」
「言葉は…？」
り「��最高のめぐり逢い��」
「…え？今口説いた？」
り「口説いとらんわおバカさん」
えーやだ、イタリア人こわい。
目の前の深みがかった赤色を眺める。
しばらくして、私が頼んだカクテルも届き。
「どうぞ、��ブルーカイピリーニャ��です」
り「やば、すご！青すぎんこれ？」
「きれいでしょ。意味はね、��情熱的な無邪気ないたずら者��」
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作者名：V
| 作成日時：2018年9月6日 0時
