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『康二、』
「…ちょっと、」
『そこからでいいから…
お願い、聞いて。』
制止しようとする金髪の言葉を遮るように、
部室の奥で黒髪の男にぴったりくっつく康二の背中にそう言った。
伝えなきゃいけないことはいっぱいあって。
言葉にならないぐちゃぐちゃな感情を、どうにか康二に伝えなきゃいけなくて。
でも、それらしい正しい言葉なんて分かんないから。
取り繕った言葉も、たぶん俺らには似合わないから。
小さなこの背中に、俺の言葉で、届けないといけない。
じゃないとこの先、俺はずっと後悔する。
『康二…ほんとに、ごめん。』
「っ!」
『謝ってすむようなことじゃない。
一ヶ月前、康二に付き合ってって言ったあれは、周りに流されてしたことで。
あの時、康二に…恋愛感情はなくて…。』
自分の声は震えてる。
周りにみんなもいる。
でもそんなことは関係なくて。
康二はどんな気持ちでいたんだろう。
告白した一ヶ月前も、罰ゲームを知ったときも、今も。
傷つけたんだ、俺が。
『でも、付き合うことも、嫌じゃなかった。
だって康二だから。ずっと大切な、親友だったから。
こんなに距離が近くてなんでも分かり合える俺らだから、付き合ったってこの関係が変わることないって勝手に思ってた。
…康二も、そう思ってた?』
遠く離れた小さな背中が震えているようにも見えて、今すぐ抱きしめたくなる。
『っ…だけど違った。
付き合ってから、新しい康二が見えて、そんな康二が可愛くて、
他の男に触れられる康二なんか一瞬でも見たくなくなって。
俺だけの康二でいて欲しくて…触れたくなって。
俺の知らない康二を、もっと見たくなった。』
「…。」
『好きの気持ちが、確実に変わっていった。』
「…うそや、」
『…康二が疑うのも分かる。
俺は最低なことしたし、康二が嫌いになるのも当たり前だと思ってる。
でも信じて欲しい。
康二に伝えた言葉は全部、俺の本当の気持ちだから。』
「……うそやぁ…」
『ほんとに今までごめん。
それと、
康二、俺、ずっと康二のことが好き。』
淀みなく真っ直ぐ伝えた最後、すとんと心に何かが落ちた。
…言えた。康二に、やっと言えた。
目に手を当てて肩を揺らす康二は、きっと今泣いていて。
『…康二、』
無意識に康二の方に行こうとする俺を、今度こそ金髪の男が制止する。
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雪 .(プロフ) - ポンさん» ポンさん初めまして。暖かくて優しいコメント頂きありがとうございます。なんと…!私の作品がポンさんの心を少しでも動かせているなら本当にとても嬉しいです( ; ; )貴重なご意見もありがとうございます。参考にさせて頂き、次回作も楽しんで貰えるよう頑張ります! (2022年4月17日 23時) (レス) id: 11c8e42471 (このIDを非表示/違反報告)
ポン - はじめまして!主様のお話を拝読してなべこじの沼に落ちました!もう何度も何度も読み返しております。日頃こういったコメントをお送りすることがないので不慣れで申し訳ありません…!もしも機会がありましたら、主様のなべこじをこれからも拝読したいです! (2022年4月17日 20時) (レス) id: c40218ffb2 (このIDを非表示/違反報告)
雪 .(プロフ) - 比呂さん» 暖かいコメントありがとうございます…!なべこじ担に楽しんで貰えるように制作したので、優しいお言葉頂けるととっても嬉しいです(^^*)私も大学生なべこじが大好きマンなので、続編や新作なべこじ作るカモです…!大きな励みになる言葉をありがとうございました!; ; (2022年3月15日 22時) (レス) id: 11c8e42471 (このIDを非表示/違反報告)
比呂(プロフ) - バレンタインの番外編も何度も読み返してます。康二くんの描写も可愛いし、両思いまでの二人のところもあまりに切なくて。最後は素直に伝える翔太くんもかっこよくて。とにかく大好きです。突然長々とすいませんでした。 (2022年2月23日 22時) (レス) id: a496cb4725 (このIDを非表示/違反報告)
比呂(プロフ) - はじめまして。ぜんぶクリスマスのせいを何度も何度も読み返している者です。なべこじ担の私ですが、このお話でなべこじのお話を読むことにハマって今でも一番好きなお話です。→続きます。 (2022年2月23日 22時) (レス) @page46 id: a496cb4725 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪 . | 作成日時:2020年12月12日 16時