ぜんぶクリスマスのせい

＊ ページ30

『…こうじ、』


「…何してんの、翔太くん。」



そう低い声で俺を睨んだのは、康二じゃなくてその隣の目黒。

片方の隣はラウールで、康二の肩を持って引き寄せている。



『なにって、』


「…新しい女？」



『は？』



ラウールの言葉に肩を揺らす康二だけど俯いてるから顔は見えない。

それよりも康二が他の男の胸の中にいることへの嫉妬心がもくもくと心の中で沸いてしまう。




「翔太くん、この人たちおともだち？
…めっちゃ睨まれてるけど。」


『…あ、』



隣の妹は首を傾げて不思議そうに俺を見る。



「おともだちとかそんなんじゃないっすよ。

…お楽しみのとこすみませんね。」



『は？ちがっ、』



お楽しみ。

はたから見たらそうなのかもしれない。

三人には、女と二人で休日のデートにでも見えるんだろう。


弁解しようとしてもラウに抱きしめられたままの康二に嫉妬心が渦巻いて言葉にならない。



…なんだよ、康二だってそいつらがいいんじゃねぇのかよ。


あんなに悩んで考えて…想ってたのは、俺だけかよ。




『…康二、こっち来い。』


それだけ言うと康二の瞳が俺を捉えた。


この前と同じ、濡れた瞳が眉を寄せて涙をこらえていて。



……なぁ、なんで泣いてんだよ。



「…行こ、康二くん。」



ラウールに連れられるまま、康二の背中が遠のいていく。



もう見飽きた、この光景も。

締め付けられるような心臓の感覚も…。



「…その女の人は、」


『…妹だよ、幼馴染の。』


「…まぁそんなことだろうとは思ったけど。」



そう言った目黒は冷静にじっと俺を見つめている。



「…なんか、無理してそう。」



『…俺は別に、』



「あんたも、康二くんも。」



『…。』




心当たりがない、とは言い切れない。


俺のせいで康二を泣かせてる。

理由は教えてくんないけど。きっと俺のせいだ。




「…分かり合えないんだったら、別れた方がいいんじゃない？」



『…は？』



「その方が今よりも楽になるっしょ。
少なくとも康二くんは。」



『…でも、』



「前の関係に戻るだけじゃん。簡単な話でしょ。」




真っ直ぐな目でそう言ってのける目黒に、何も言えなかった。


目黒の言う通りだから。




「…康二くんを、解放してあげなよ。」




…なんなんだよ。




目黒が康二たちを追って涼太が俺らを見つけに来るまで、

モール内は今の俺にはあまりにも似つかないクリスマスソングが呑気に流れていた。

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