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「…ふーん。」
「どういうとこが好きなんすか?」
『どういうとこ…、』
身を乗り出したラウールから離れるようにのけ反りながら康二をまた盗み見た。
なぜか少し顔を赤らめている康二は、膝にかけた自分の水色のカーディガンを両手で握っている。
ぎゅうっと握りしめたそれは少しシワになってしまってて。
『可愛い。』
「…え、それだけ?」
『…だめかよ。』
「可愛いねぇ…。
あーでも渡辺せんぱいは知らないですよね、ゼミの時の康二くん!
まじですごく可愛いんですよ!」
「発表の時は緊張して足とかガクガク震えるし、ハロウィンの日にコスプレした時なんか康二くんの女装姿に何人か本気で惚れてたしね。」
…は?
『女装…?』
「ちょっ、翔太くんには内緒って約束したやん…!」
「あ、言っちゃった。」
『…あ、そ。』
…知らない。ゼミのことも、女装のことも。
こんなに一緒にいるのに、まだ康二の知らないことあったんだ。
というか、教えてくれなかったんだ、康二。
俺らの会話はほぼ康二が主体で、その日の面白かったことは笑いながら話してくれるし、悲しいことはたまに思い出し泣きしながら教えてくれる。
だからこそ康二のことはなんでも知ってるって思い込んでた。
康二の中で俺は、他の奴らよりも特別な場所にいると思ってたのに。
「…ねぇ、ほんとに康二くんのこと好きなんですか?」
『…。』
そう聞くラウールに、今度は何も言えなかった。
自分でもずっと分かんないままでいるこの気持ち。
好き、だけど。
康二のことは好きだけど。
「もう、やめてや。」
「…康二く、」
「2人が思ってるような悪いもんちゃうから。
普通に今までのともだちの延長線みたいなお付き合いやねん。
心配してくれてありがとう…でも大丈夫やから、俺らは。」
そう言って顔を上げた康二は俺を見て、眉を下げて笑った。
…なんだよ、その顔。
「ほらもう食べよう!
ご飯冷えてまう!」
なんでそんな顔すんだよ。
俺の気持ちが分かんないのと同じくらい、康二の気持ちも分かんなくて。
心のモヤモヤは晴れることなく胸の中に溜まっていく。
窓の外では赤と黄色と、茶色に染まる葉が揺れる。
冬の訪れかのような風が木々を揺らしても、その風が俺らに届くことはなかった。
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雪 .(プロフ) - ポンさん» ポンさん初めまして。暖かくて優しいコメント頂きありがとうございます。なんと…!私の作品がポンさんの心を少しでも動かせているなら本当にとても嬉しいです( ; ; )貴重なご意見もありがとうございます。参考にさせて頂き、次回作も楽しんで貰えるよう頑張ります! (2022年4月17日 23時) (レス) id: 11c8e42471 (このIDを非表示/違反報告)
ポン - はじめまして!主様のお話を拝読してなべこじの沼に落ちました!もう何度も何度も読み返しております。日頃こういったコメントをお送りすることがないので不慣れで申し訳ありません…!もしも機会がありましたら、主様のなべこじをこれからも拝読したいです! (2022年4月17日 20時) (レス) id: c40218ffb2 (このIDを非表示/違反報告)
雪 .(プロフ) - 比呂さん» 暖かいコメントありがとうございます…!なべこじ担に楽しんで貰えるように制作したので、優しいお言葉頂けるととっても嬉しいです(^^*)私も大学生なべこじが大好きマンなので、続編や新作なべこじ作るカモです…!大きな励みになる言葉をありがとうございました!; ; (2022年3月15日 22時) (レス) id: 11c8e42471 (このIDを非表示/違反報告)
比呂(プロフ) - バレンタインの番外編も何度も読み返してます。康二くんの描写も可愛いし、両思いまでの二人のところもあまりに切なくて。最後は素直に伝える翔太くんもかっこよくて。とにかく大好きです。突然長々とすいませんでした。 (2022年2月23日 22時) (レス) id: a496cb4725 (このIDを非表示/違反報告)
比呂(プロフ) - はじめまして。ぜんぶクリスマスのせいを何度も何度も読み返している者です。なべこじ担の私ですが、このお話でなべこじのお話を読むことにハマって今でも一番好きなお話です。→続きます。 (2022年2月23日 22時) (レス) @page46 id: a496cb4725 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪 . | 作成日時:2020年12月12日 16時