初恋のはなし 2 (ページ40)

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バイトするはなし 1 ページ40

9月ももう終わりに近づいてきた夏の終わり、Aがアルバイトを始めた。
学費も家賃も親に払ってもらってるから、さすがに自分に使うお金は自分で稼がないと、なんて言い出して、思い立ったらすぐ行動する所は本当にAのいい所だと思う。
丁寧に履歴書をかいて、すぐにメールに添付して送っていた。

なんだろう。子供を旅に出す親の気持ち？が1番近いと思う。
もちろん俺は親ではない彼氏なんだけど…どうしても、Aのことに関しては保護者のような気持ちになってしまうのは、やっぱりAが子供っぽいからだと思う。

『福良さん。Aさん、ほんとにここでバイトしてるんですか？』

実は、今日Aが働いている所に、山本と来てしまったんだけど。Aには秘密で。
もちろん、秘密にする必要はなかったんだけど…何となく言い出しにくくて。

『…そうだよー。最近始めたんだよ』
『この間のメイドさんよりは安心だと思いますけど…ここ、福良さんのホームですよね』
『や！ホームではないでしょ。まあ、良く来るところではあるけど。…今日、夜の公演でイベントスタッフやるって言ってたから…ちょうど当日券あったし、まだやった事ない脱出ゲームだったから、とっちゃった。付き合わせてごめんね。』
『いえいえー！！かなり楽しみにしてたんで、逆にありがとうございます！敵情視察ってわけですね！』
『敵ではないでしょ！』

まさか、Aが脱出ゲームのイベントスタッフのアルバイトやりたいなんて言い出すと思ってなかったから、それに応募してみるって言われた時はびっくりしたなぁ。
確かに、最近のデートと言えばもっぱら謎解きイベントだし、Aも楽しい楽しい！って喜んでくれるから、ついあれもこれもとまだ行ってなかった謎解きに連れ回してしまった時はやり過ぎたか？と思ったけど、Aも完全にハマってくれたらしい。

というわけで、謎解き好きな山本に付き合ってもらって、Aが担当しているらしいタイムリープ系の脱出ゲームをやりにきたってわけ。
彼氏としては…イベントスタッフをやってるなら1回はそのイベントに参加してみたいと思うのは普通のことでしょ？
敵情視察…ではないけど、一応、ね。
どんな人と一緒に働いてるか、とか…見ておかないと、ね。
まあ、そんなことは関係なしで、脱出ゲームを楽しむ気満々なんだけど。