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『昨日からなんで連絡しないの?何回も連絡してるのに…心配するでしょ?』
『……っ…』
そんな風に優しい言葉を掛けられたら、我慢できないよ。
また、じわーっと涙で視線が揺れてしまう。
『…A?どうしたの?なにかあった?』
拳さんがAの顔を覗き込もうとするから、急いで首を振る。
こんな酷い顔、見られたくないっ!
『…っ…ひぅっ…』
『泣いてるの!?どうしたの?俺の家、おいで?』
手首を掴まれて、優しく引っ張ろうとする拳さんの手を振りほどく。
…浮気、したんじゃないの?
Aと、お別れ、したいんじゃないの?
『…A?』
『っ、…っ…お別れ…やだっ…浮気、だめだよぉ…』
『は?』
何とか気持ちを伝えるけど、拳さんは訳分からないと言った表情で首を傾けている。
『…何言ってるの?浮気?Aは、俺が浮気してるとでも思ってるの?』
拳さんの表情が、曇っていくのが分かる。ってか、少し怒ってる?
『だって…だって、見たんだもんっ!!』
『…いつ?』
『きのうっ…女の人と仲良くしてたの見たんだからっ…』
昨日の拳さんと女の人のことを思い出して、またポロポロっと涙が零れてしまう。
それなのに、拳さんが呆れたようにはぁぁぁとため息をつくから、びくっと体が震えてしまう。
『…今日の夜、話そっか。…ちゃんとお利口に待ってて』
小さくこくんっと頷くと、『仕事だから、行ってくる』と言って、拳さんがあわてて仕事に向かうのを見送った。
…昨日の、浮気じゃなかったの?
拳さん、少し怒ってた。
Aが浮気を疑った、から?
でも、あんな風に親しげに話してたら…誰でも心配になっちゃうと思う。
部屋に戻って、買ってきたおにぎりを食べた。
まだ、拳さんから直接聞いたわけじゃないけど、浮気じゃなかったなら…良かった。
お別れ…しなくても、いいのかな?
まだ、拳さんの彼女でいいのかな。
でも、浮気を疑うような彼女じゃ嫌だって言われちゃうかも…。
また気持ちがマイナスの方に傾き掛けたので、ぶんぶんと首をか横に振った。
『…ちょっと寝てから大学行こう』
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作者名:奈絆 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年9月19日 22時