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(三) 瓶と根 ページ4

「きみは―――」

 彼は、一たびそうつぶやきましたが、すぐに口をつぐんで、言葉をのむようにしてから次の言葉を待ちました。

「きみは、いつもここにいるの?」

 彼女は三角座りになって膝をかかえ、ゆっくりうなずきました。彼もその隣に腰をおろしました。

 それからぽつりと彼が問い、彼女がうなずき、といった問答をいくばかし、いくらかの沈黙をおいてかわされて、彼は自宅―――とは言っても、廃トンネルという薄暗く、湿っぽい、どちらかというと「住処」に近しい所―――に帰りました。


  *


 彼はその後、正直申すと彼女のことを、忘れていました。あの丘で話していたときの彼女への興味や愉快さは、たしかに感じていたはずでありますし、一時の別れを少しばかり名残惜しくも思ったほどでしたが、街へ出てみると、存外その密度に気圧されて、忘れられるわけです。彼はあの日から一週間経った日のこと、ふと彼女を思い出しました。

 彼はその長い足で大きな一歩々々を踏んであの丘、あの桜の樹を目指します。じつはその丘のある公園というのは、バブル崩壊手前の日本の有り余ったお金によってつくられたテーマパークを、そののちに改装したという、大きな公園であるのでした。しかしながらその半分ほどは手つかずで、それは、もとのテーマパークのまま、廃墟としてそこに残っているのです。丘は、そのさらに奥にありました。

 公園と廃墟を二分する柵というのも、超えるのにずいぶん容易く、彼はまたあの樹を見ました。以前とは少し違って、彼女は陽のあたるほうの樹の下に腰かけていました。三角座りはやはり変わらず、彼が手をあげると、彼女もひらひらとその白い手を振りました。

 彼は彼女の座るちかくに着いたいなや、すぐにそれを口にしました。「ねえきみ、呪いでしょ」と。

(四) 根と指先→←(二) 彼女と瓶



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うずのしゅげ(プロフ) - 凪疾さん» めちゃめちゃ嬉しいです…!! 読み進めたくなるなんてありがたいお言葉をいただいているのになかなか更新できずじまいで申し訳ないです。近々更新頑張りたいと思います! 絶対…!完結させます…!! (9月19日 10時) (レス) id: c82952eeb4 (このIDを非表示/違反報告)
凪疾 - とても面白くて、私の好みで、読み進めたくなるような作品だなと思いました。更新楽しみにしてます! (9月17日 19時) (レス) id: ad3483f622 (このIDを非表示/違反報告)
うずのしゅげ(プロフ) - とよさん» 返信遅れてしまって申しわけございません!!! 遅くなりましたが改めて、本当にありがとうございます!! 受験期は、とよ様のお言葉が心の支えでした!! このお話は、少しずつでも完結させるつもりなのでこれからもよろしくお願いいたします!!! (5月19日 22時) (レス) id: c82952eeb4 (このIDを非表示/違反報告)
とよ(プロフ) - コメント失礼します。更新お疲れ様です!いつも楽しく読ませていただいてます!受験頑張ってください!!!! (2023年2月12日 14時) (レス) @page13 id: d1624c287f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うずのしゅげ | 作成日時:2022年12月19日 22時

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