43恋じゃない ページ3
彼のたわいもない世間話を聞いていたら、とうとう目的地の水族館に着いてしまった。
てか、この水族館って殺人事件があったとか聞いたことあるとこじゃん。
「行きましょうか」
そんなことを考えていると目の前に彼の手のひらが差し出された。
これってまさか…。
カップルという設定で仕方なく手をのせてみると、指に指を絡め取られる。
『恋人繋ぎ…』
「手を繋ぐのが嫌なら貴方が僕の腕に腕を絡めてくれますか?』
『いえ、遠慮しときます』
その方がより体が密着することは考えたら分かることである。
彼の本当の恋人なら喜んでやりそうだが、私はあいにく彼のことが好きなわけでもな…
ズキン
……まただ。
時々起こる胸の痛みに悩まされる。
これじゃあ、まるで私が彼を好きみたいなそんなやり場のない感情を抱える。
「どうかされましたか?」
そんな葛藤をしていたら、意識を呼び戻されて彼の顔が間近にあったのを知る。
『っ…!』
思わず1歩下がると、後方のタイルの出っ張りにヒールをぶつけて仰け反ってしまう。
絶対、尻餅を打つだろうなと重力に身を任せてギュッと目を瞑ると
「大丈夫ですか?」
不思議と痛みはなく、彼の見た目よりしっかりした腕に腰を支えられていた。
でもそのせいで、さっきより距離も近くなっていた為、集中的に顔に熱が集まる。
『大丈夫です。もう離れてください人目が…ってちょっ!』
必死に強がって彼の腕から逃れようとするも、力は緩むどころかもう片方の手が、私の顔を隠していた髪を払う。
「貴方のタイプが黒髪発言の時から、てっきり赤井こことが好きだと思っていましたが、無駄な餅を焼いてしまいましたね」
そんな私をお構いなしに彼はつらつらと言葉を並べて、私の様子をチラチラ伺いながら楽しんでいる。
「嬉しいなぁー。貴方の本当のタイプは僕のようだ」
楽しんでる反面、愛おしいものを見つめる優しい瞳を向けられ私は困惑する。
銃口を突きつけられたあの夜とは、真反対の瞳。
「じゃあ、行きましょうか」
彼は一体何を考えているのだろう。
ギュッと再び手のひらに触れる温もりに、振り払うべきかと考えもした。
しかしまぁ、いい。
私の目的は彼の秘密を暴くこと。
ただそれだけだもの。
手を繋ぐぐらいはいい…よね?
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作者名:星香 | 作成日時:2019年6月3日 15時