１ダースの恋

#31 ページ34

康二「あ………ぶな、…………」




すれすれで電車に駆け込んだおれは
スマホを鏡代わりにして
必死に寝癖を直して。


……ほんまに、恋する乙女みたい、


なんて。
アホなこと考えんのやめや。




康二「ふぅ……、」








＿＿まもなく、








乗って、くるやろか。

来やんかったら、降りて駅で待ってようか。

それとも、そんなことしとったら
気持ち悪いと思われるかな。


なんてことが頭をぐるぐる回っとったけど
一瞬にして思考回路が止まった。




蓮「おはよ、コージクン。」




たった、その、一言で。




康二「お、おはようございます、…」

蓮「何その感じ(笑)…コージクン、固すぎない？」

康二「お…、はよう…？」

蓮「それで。敬語、ずっと気になってたんだよね。ね、コージクン。」

康二「はい、あ、…うん、？」

蓮「…………呼んでよ。」




そう、少しだけ拗ねたように言いながら
目黒さ、…目黒くん、は、おれの隣に座った。




康二「め、…目黒、くん、…」

蓮「……照れてんの？(笑)」




こんな距離、
初めて声をかけた日に、おれがよろめいたとき以来で。

…そのまま顔を覗き込まれて
もう沸騰しそうに暑かった。




蓮「あれ？誰が言ったんだっけ？目黒くんって呼んでいい？って。」

康二「やめて、…………」

蓮「…ふは、(笑)」





両手で、顔を覆った。

#32→←#30

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す