CBくんたち！【短編集】

【G】はじめのいっぽ(1) ページ8

***



それは仕事帰り、いつものように電車に乗り、いつもの駅で降りた時のことだった。

「あ」
「え」

出会い頭、思わず二人同時に漏れた声。
それもそのはず、目の前にいるのは、アメリカに行ってしまったはずの人、懐かしい人だったから。

「え、ジョージ…？なんで…？」
「一週間くらい前に帰国したとこ…え、マジで久しぶりじゃん！」

何年ぶりだ！？と、はしゃぎながら、私の元へと寄ってきたジョージとは、中学と高校が一緒だった。
高校を卒業してすぐにアメリカに行ってしまって、その後成人式で会ったくらいだ。
動画の仕事をしていることも、凄く人気があることも知っていたから、てっきりもう一生アメリカに居るつもりなのだとばかり思っていた。

「6年ぶりくらい…？ほんとに久しぶり」

私がそう言うと、やべーな！と言う、あの頃と何も変わらない懐かしい声が、暗くなり始めた辺りに響き渡る。
相変わらずの大袈裟な笑顔と、少年みたいな元気な声に思わず私まで笑顔になった。

「スーツ…って事は仕事帰りか。この後用事は？」
「ないけど…なんで？」
「久々の再開だし、一緒に飲みにでも行こうかと思ったけど…やっぱ忙しいか？」

旨い店があるんだよ、と張り切っている様子のジョージ。
たまたまこうして久し振りに会っただけなのに、ほぼノリと勢いで飲みに行こうだなんて…
私なんかのために時間を割いてもらってもいいものなのか、私なんかよりジョージの方が忙しいんじゃないか、ととにかくいろんなことが心配になったけれど、私とジョージの足はもう既に駅前の飲み屋街の方へと向かっていたから、もうこれは行くしかない雰囲気だった。

「何にもないよ。丁度、久々に飲みたいなって思ってたとこ。だから行こ！」

鞄の中で、先程から何度か鳴り響いている携帯を無視して、ずんずんと進むジョージの背中を、走りにくいパンプスで追いかけるのだった。



(2へ)

【G】はじめのいっぽ(2)→←【G】構ってください

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す