【J】はじめまして、恋心(1) ページ21
***
幼い頃に父が出て行って、それ以来優しかったはずの母は夜出歩くようになった。
朝帰ってきて、死んだように眠りにつくのを、心配しなくなったのはいつからだったろう。
最後に一緒にご飯を食べた日も、一緒に出かけた日も、今では遠い昔の話。
高校3年生になった頃、母が「貴方の新しいパパよ」と、ピアスと刺青だらけの男を連れてきた時、ようやく気付いた。
何が新しいパパだ、こんな男と結婚したってどうせまた捨てられるだけだ。
母にとって私はなんでもない、ただの同居人でしかないのだと、気付かされた。
そして、18歳の夏、私は家を出た。
高1から貯め続けたバイト代と、携帯と、あと唯一私の心を埋めてくれた煙草だけを持って。
煌びやかなネオン街を抜けた先の暗がりで、金髪のお兄さんが、遠くを見つめて紫煙を吹かせてるところに遭遇する。
長身によく似合うダボ付いた服、耳に光るピアスとブランド物のキャップ。
東京なんて、人ばかりが馬鹿みたいに溢れてるけど、それでも何故か、その人に自然と目が惹かれた。
「お兄さん、煙草の火、頂けませんか？」
吸い慣れた煙草の箱を見せると、ちらりと横目でこちらを見やるもすぐに逸らされる。
「無理」
「どうして？」
「だってお前、未成年でしょ」
「え…なんで」
「こないだ、この辺の道、制服着て歩いてんの見た」
俺ん家この辺だから、と携帯灰皿で火を消すと私の方に向き直る。
「よく見てるんですね」
「学生の癖に髪やたら明るいし、不幸オーラ半端ないから自然と目がいった」
私の学校の校則は緩かったから、髪は極めて明るい茶色。
それよりも、不幸オーラなんて…失礼な。
まあ…間違ってはいないけど。
「で、こんな時間にこんな所で何してんの？補導されるんじゃね？」
「…家出、ですかね」
「ワケありってとこか」
小さく溜息を吐いたお兄さんは、私の手を引いた。
「え、ど、どこ行くんですか？」
「家出、付き合う」
付き合う、と言われても一体どこに行くのか。
名前も年齢も何も知らないこの人について行ってもいいものなのか。
いろいろ考えはしたものの、自分は家出をしたということを思い出して、どうにでもなれ、とこの人について行くことにした。
(2へ)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 149人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なな - 更新されたお知らせを見て、1人1作品までと書いておりましたので、下のリクエストのジローバージョンだけで大丈夫です^ ^よかったらお願いします^ ^ (2018年8月12日 16時) (
レス) id: 95dae1597d (このIDを非表示/違反報告)
なな - ジローともう結婚してる設定で、妊娠してから出産した後までのお話が見たいです！それのジョージバージョンも見たいです！よかったらお願いします！ (2018年8月11日 9時) (レス) id: 66904d1436 (このIDを非表示/違反報告)
ナユタ(プロフ) - るぅてゃんさん» 初めまして、暖かいコメント頂き、誠にありがとうございます。何度も読んでいただけて、とっても嬉しいです…！拙い文章ではございますが、これからもよろしくお願い致します。 (2018年8月10日 14時) (レス) id: 33ad2629a4 (このIDを非表示/違反報告)
さささ。(プロフ) - ジョージがシアトルで彼女が日本の遠距離が見たいです!!!イベントで日本に帰ってくるけど忙しくてなかなか会えずにいたけどジョージからのいきなりの電話で会うことになってラブラブするっていうシチュエーションが見たいです!!!更新楽しみにしてたので頑張ってください (2018年8月10日 10時) (レス) id: 30a4697702 (このIDを非表示/違反報告)
るぅてゃん(プロフ) - もう5回以上読み返しているのですが何回読んでもきゅんとなって素敵なお話と文章で大好きなのでこれからも頑張ってください！ (2018年8月10日 0時) (レス) id: 809da260df (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ナユタ | 作成日時：2017年7月26日 16時
