一周まわって、【泉孝介】 (ページ8)

今日:5 hit、昨日:3 hit、合計:2,007 hit

8周ページ8

.

突然だけど、私には友達がいる。軽音部の同学年で唯一違うクラスの須賀Aだ。私は基本、ほぼ全員に上ちゃんと呼ばれている。
やつとはやっているゲームが同じことから、部活内ではよく一緒に行動をしている。担当楽器こそ違うもののたまに交換して遊ぶこともある。

不幸体質故に、ベースなのにしょっちゅう弦が飛んでいく。その度に涙目になりながら「ぺ、ぺんち……」と言っている。2週間に1回はこんな感じだ。今日も朝から順調にやっていたのに、夕方にはピックが消えたと言う。

「そういや、なんでAはベース選んだの？」

「音を支える音って、かっこいいと思わない？あとね、野球場のあの塁みたいに、なにかに繋がるひとつになればいいなって。曲によってはただ支えるだけじゃないから……」

作業をしながらやつはえへ、と笑っていた。西陽が彼女の輪郭を、楽器を照らす。どこに野球の繋がりがあるんだあんた……と言いそうになって、口を閉じた。何回か、幼馴染が野球部だって聞いた気がする。同じクラスの泉だったか、今日はそいつのためにAは夜まで学校にいるらしい。

「……信用してないってわけじゃないけどさ、気をつけてよ、ほんと。不幸体質よりもドジ特性が不安で仕方ない」

「ドジじゃ、ないよ……多分！」

「どうだか！しっかりやんなさいよ、怪我させないように」

「うん、ありがとう！またあさって！」

嬉しそうな顔をして、先に駆け出した。