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「泉、今日調子いいな」
「そうか?いつも通りだと思うけど」
マシンに合わせて素振りをして順番待ちしている間、水谷がそういえば、と話しかけてくる。努めて平静を保ってはいるつもりだけど、水谷にバレたら全員に広げられかねない。
「んー、なんていうの?Aちゃんが来てから、いつもよりちょっと前に出てる感じ?」
「お、おめーはそういうの見なくていいから上手い人のフォーム見とけ!あとAって呼ぶな!」
「いだっ、え、ひど!」
膝裏をちょっと蹴ると水谷はぐへっと地面に突っ伏した。そんなこと気のせいだ、変わったことも何もしていないはずだから。
「水谷ー!西広にスタメン取られるぞー!」
「は、はひ〜〜〜〜〜」
いいところを見せようなんてあまり思わないけれど、Aが応援にきたときに、いままで負けたのはAのせいじゃないって証明したい。
そのモチベーションがいつまで続くかなんてわかりゃしないけれど、自分に返ってくることならやれるだけやりたくなっていく。
自分の番になってネットの前に立ち、ピッチングマシンのボールを待つ。第一球振ると、ピッチャーとセカンドの間を抜け、飛距離的にはセンター手前まで伸びていった。
今日もたくさん打って、食べて、飲んで、走って。投げて、打って、たくさんやれるだけやろう。気持ちは逃げなくても、練習時間はやらないと逃げていくのだから。
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作者名:郁 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年12月2日 1時