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グラウンドに着くと、もうAは来ていた。というかそんなに早く来ると思っていなくて正直焦っている。
篠岡によると練習だけなら、と言ったらしい。着替えながら様子を窺うと、どうやら田島は苦手ぽく、すぐに篠岡とその他7組のメンツ、そして俺に助けを求める目を向けるべくあわあわとしている。
「A、帰りはどうする」
「えっ、よ、夜も……?」
「いや、用あるならいーけど」
「特に、ないよ。でも……」
ああ、気にしてるんだろうな。
一緒にいるときは、 特に不幸体質をうざったくも、ましてや不幸とも感じたことはない。何故だかわからないけれど、Aだけ不運なことに巻き込まれていた。
中学の頃は遠足でカラスに弁当をつつかれフンまでおとされ、部活では入念にセットを確認してもアンプがよく引っこ抜けたり弦がぱちぱち弾けたり(これは技術でカバーしているところもある)、テスト中はしょっちゅう紙が白紙だったりした。あまりにも不幸すぎて、誕生日プレゼントにお守りを大量にもらっていたこともあったっけ。
練習試合を見ないかと呼ぶと大抵負けているのを気にしてか、自分のせいだと言って来なくなってしまった。多分他にも色々とあるんだろうけれど、好きな人に一部始終見てもらえないのは、こちらとしては悲しくなってしまう。
やっと、幼い頃の夢に手を伸ばすことができる歳になったのに。お前はスタンドで見守ってくれないんだ?そう言いたい気持ちが募っていく。
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作者名:郁 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年12月2日 1時