12周 ページ12
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『俺もすきなもの見れたし』
「ちょっと、甲子園はまだだよ」
『そうじゃなくて、いやそれもあるけど。今日はお前の顔』
ちょっと何を言っているのかわからない。携帯をを持つ手が震えるし、受話器から何も聞こえないのも怖い。孝介は冗談を言うようなタイプではない。じゃあ、そんな、
『本気だよ、お前のことはずっと好き』
「待って、待って。ちょっと待って、眼科行った方が……」
『そんなオタクの戯言は聞きません、俺はAに聞いてるんだけど。Aは俺のこと、……どうなの』
そんなこと言われたって、どうなんて言われたら私も好きだって言いたい。こっちは拗らせかけてここまで踏ん張ってたのに、そういう意味で不幸体質をぶち壊してくれたのかと思うと孝介の心の広さに感動してしまう。涙をこらえるのに必死だ。
『俺は好きな人に試合見に来てほしいし、一番見守っててほしいし、そばにいてほしいと思ってる』
「ずるい、孝介はずっと待ってたんだ、ずるいや……」
『ずるくて結構、俺はお前に嫌われたくないから最初こそ逃げてた。でもお前も逃げるから、じゃあ逆に追いかけてやろうと思って』
「……好きだから、傷つけたくなかったんだよ。だから行けなかった、見る資格なんてないと思ってた。でも行けるようにしてくれた。ほんとにありがとう、これからも見せてください……」
一周まわって、不幸体質を思い込ませなくしてみた。
了
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作者名:郁 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年12月2日 1時