傘屋の直吉と浪人直己…弐

盥で湯浴み……伍 ページ7

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びくともせぬ体躯に






直吉『む〜〜うぅ〜〜』






直己「フッ、若とは、体幹が違うのですよ」






直吉『あっ、』

不意に腕の力を弱め、直己に持たれかかり





直己「あっ、若っ、大丈夫でござるか？」

傘屋の両肩を支えると……






直吉『隙ありィ〜〜』








直己に持たれかかったまま、勢いよく
体当たりをし……





「バシャッ〜〜〜〜ン」





侍を下に、そのまま二人は、盥に倒れ込み






「ゴッツン」





「痛っぅ〜〜」

と、侍が縁側の縁に後頭部をぶつけ





「バラバラバラッ」

と、盥が綺麗に分解し……






『「………………」』







直吉『おまえ…勝蔵さんに……』







直己「勝蔵さん……」






直吉『……あぁ〜〜叱られっからなぁ〜〜

知〜〜らないんだぁ〜〜、知〜〜らないん

だぁ〜〜、言っ〜〜てやろ〜、言ってやろ〜』








直己「……若が、悪いんじゃないん

ですかぁ〜〜、拙者のせいでは

ありませぬ……若が、謝って来て下さい。」











直吉『イヤイヤ〜〜おまえが、水なんか

掛けるからだろうがぁ〜〜、こんなずぶ濡れ

で、ビショビショじゃあ〜〜、俺、明日風邪

引いちゃうなぁ〜〜、ああぁ〜〜寒い

良い男が、ビショビショじゃあ〜〜台無し〜

も〜〜う、どんだけ〜〜』









直己「…………うっさいなぁ〜」









直吉『なにぉ〜〜ぅ〜〜』

手元にあった、手桶ごと投げようと

したら…………






「ツルンッ」







「ゴッツン」







「バシャッ」







足元が滑り、つるんっと滑って

壊れた、盥にゴッツンと当たって

手桶が頭の上で、ひっくり返って

三たび、水を被る羽目になった

………………傘屋の旦那…







壊れた盥の上に、裸のずぶ濡れの男

が、ポカンっとしているのを見て

同じく、ビショビショの、荒くれ侍が

笑い出した……
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