傘屋の直吉と浪人直己…弐

盥で湯浴み……参 ページ5

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直己「直人さま……湯屋は、裸になります故……

危険が伴います……」








直吉『…………分かってる、分かってるって

やっぱり、本所の外れの湯屋に行くしか

ないかなぁ〜〜…………綺麗なお姉さんは

無理だろうけどなぁ〜〜』









足し湯を、混ぜ、背中に湯を掛ける

直己に、言った後…………







直吉『なぁ〜〜、横須賀に行けよ。』








直己「えっ……」








直吉『俺は、帰れないが、おまえは違う

……帰れるだろうが。




「直人さま……」




……おまえが、城を追われて訳じゃない。

おまえは、毎日、なんの為に

素振りをしているんだよ。

直己、おまえは、刀を振るう

機会が、欲しいんじゃないのか？……





「違っ……」




俺は、もう大丈夫だよ。

町人暮らしも、板について来ただろう？

おまえは、どうやっても、侍じゃないか？

違うか？俺の言ってる事……

それに、おまえは、昔っから

橘を、慕っていただろう？

行って、いいんだよ……

なぁ〜〜直己〜ィ〜聞いてる？』









静かに、背中を流し始めた

熱い侍に問い掛けた……









直己「若………






『よせ直己……』






ハイ、失礼しました……」





俯きながら礼儀正しく頭を下げる

生まれ持っての侍に……






直吉『なぁ〜直己………



「ハイ」



オレは、この暮らしが、気に入ってんよ……

ずっと、傘屋の直吉っつぁんで

入られるなら、それはそれで……





「ザァ〜〜」





……良いじゃねぇかぁ〜〜』



盥から、湯が溢れ出し……

手ぬぐいで、顔を拭き

大きな盥に、両脚を投げ出し

肩まで浸かると

空を見上げてこう言った……





直吉『ただ、気がかりなのは

おまえの身の振り方位だなぁ〜〜

橘に、一度会って話して来い





「若……」






俺は、ここにいるから。』





俯く直己は、一緒にとは、言わなかった……。
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