charm ページ18
葛葉「俺の血をやるから飲め」
『…!?』
葛葉が朱里に向かって言う。
朱里は動揺しているのか固まっている。
葛葉「お前だってそろそろヤバいって分かるだろ」
『…うん』
朱里自身も自分の限界も感じていた。
だけどパックに手をつけようにも
身体が拒否し続け言う事を聞かない。
葛葉「俺別に怒ってないからな?
お前の体が心配なんだよ」
『サーシャ…でも…わたしは…』
葛葉はおもむろに朱里の手を取る。
手を握り返す朱里だが…
葛葉「ほら分かるだろ?
手にほとんど力が入ってねぇのが」
そう、朱里が握り返した手は
力が入らず冷たく震えている。
手が震えていることに気付いた
朱里は手を離そうとするが、
葛葉はぎゅっと握り離さない。
朱里が葛葉の血を飲むのを拒むのは理由があった。
昔…まだ<子供>だと言われていたほど昔…
初めて吸血鬼の本能に抗えなかったあの日。
偶然にも屋敷に来ていて、
一緒に居た葛葉の首を噛んでしまったのだ。
その時は背筋の凍る思いだった。
血を啜る音と身体に流れてくる感覚、
“ 美味しい ”と感じてしまったあの瞬間。
葛葉が倒れ込むほど血を貪ってしまったことを
今でもハッキリと覚えている。
葛葉はすぐに回復し、大丈夫だと言ったが
朱里は怖くて仕方なかった。
自分が自分で無くなったかの様な感覚が
朱里の身体と記憶にこびりついている。
『…嫌っ』
初めて朱里は葛葉を拒絶した。
『…(あっ…)』
葛葉「そんな顔すんなよ」
拒絶してしまった事で取り乱した
朱里を葛葉は決して責めずに慰める。
だが朱里にはその声は聞こえない。
バリバリバリッ! ガシャンッ!
朱里の部屋の壁紙が引き裂かれたかの様に破れる。
窓ガラスは割れて破片が飛び散る。
この現象は吸血鬼には稀にある事だ。
自分の存在を否定したり、
負の感情が多ければ多い程なりやすい現象だ。
葛葉「シェリー…自分を否定すんな!」
これ程の魔力の乱れを見たのはあの日以来。
葛葉はシェリーを引き寄せて抱きしめる。
低い葛葉の体温が今では暖かく感じるほど、
今の朱里の身体は冷えきっていた。
『…あっ…あぁっ…』
朱里は何とか自我を保とうとするが、
ここに来てとうとう吸血鬼の本能が溢れ出す。
今葛葉は朱里を抱きしめて離さない。
このままではまた…葛葉を傷つけてしまう。
今日の1曲
エンヴィーベイビー/叶
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作者名:なつ. | 作成日時:2021年7月11日 1時