夏の魔法

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あほやな、俺。


「ごめん。
焦らん言うたん、俺やのに。
しげに嫉妬して抑えられへんなった」


はっきり、しげに嫉妬した、言われてもうた。


「謝るん、俺の方やん。
彼氏やねんもん。
キスぐらい当たり前やのに・・・」


「出張の間、しげと、なんかあった？
告白でもされた？」


うなづくしかなかった。


「そっか、やっぱ、しげも・・・」


「けど関係ないから。
しげには、もう、」


振り回されたくない。

またあんなに好きになってしもて、
溺れて傷付くのが怖い。


「もう？」


「・・・」


「智洋の高校時代の片想いの相手。
しげなん？」


流星には、隠し事出来へん。

そんなん、フェアやないもんな。


うなづいて、
流星を見上げたら、

見た事ないような、
傷ついた目をしてた。


流星に、こんな顔させてんのは、俺。


「けど、過去の事やし、
過去にも何もなかったし。
しげ、全然俺になんか興味なかってんで？
誰も知り合いおらん東京で再会したから、
嬉しなって、
それを恋愛やて勘違いしてんちゃうんかな」


明るく言うたつもりやったのにな。

きつく抱きしめられて・・・


「誰にも渡したくない・・・
どこにも行かんとって」


耳元に囁かれた声は、切なかった。


「どうしたん？
流星が、そんな弱気になるなんて」


「本気で好きな相手のことになったら、
誰でも気弱にもなるやろ？」


「・・・流星」


「ごめんな。
重いよな・・・
タルト食べよ。
甘いもん以外にも、
色々買うてきたから見て？
部屋着とか食器とか」


「そんな、良かったのに。
けど、流星、センスええから嬉しい。
ありがとうな」
　

リビングのテーブルには、
置き切られへんほどのお土産。


「智洋が喜んでくれる顔、想像してたら、
ついつい」


「ありがと」


自分から抱きついたんは、初めてや。


「頬にならええ？」


遠慮がちに聞く流星に、
ほっぺたに短いキスされた。
　

こんなに大事にされて、
それやのに、

抱きしめられた時のしげの温度、思い出してまう。


俺、最低やな。


流星を好きになりたい。

好きになる努力なら、どれだけでもするから。


しげの事、忘れさせてや・・・

夏の微熱。(２０１１年夏) １→←６

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